公募研究
「痒み」は、「痛み」と同様に体を守る生体防御反応の一つであり、また、体の異常を知らせる警告反応の一つとしても認識されている。しかし、両者は全く別のものであるということが科学的に報告されて以来、痒みの伝達系や作用機序に関する研究は、遺伝学、神経薬理学、生物学、そして臨床研究を中心に精力的に行われてきた。一方、リガンド-受容体間レベルでは、痒みに関する研究は痛みに関する研究ほど進んでいない。本研究の目的は、アレルギー性の炎症や痒みに関与すると報告されているオーファン受容体Mas関連Gタンパク質共役受容体、特にヒトのMRGPRX2に作用する化学コミュニケーション分子の創製と、それを利用した受容体周辺マシーナリーの解明である。二年目は、一年目に評価系の構築上の問題などで実施出来なかったヒトMRGPRX2およびマウスMrgprb2のin vitroアッセイを、東北大学の井上飛鳥先生らの協力によって実施することができた。いくつかの誘導体をin vitro評価した結果、最初に見出した非天然型モルヒナン化合物の活性値を超えるものは見つけることが出来なかったが、その一方で、MRGPRX2とオルソログであるMrgprb2においては同一分子による相関がほぼ同じ傾向にあることや、非天然型モルヒナン分子の構造変化によって大きく活性が変化する部分構造、活性に変化を与えない部分構造の発見など、今後の分子設計において重要な構造活性相関情報を得ることに成功した。これらの非天然型誘導体は、すべてオピオイド受容体とは結合しないことも確認した。また、in vitroにおける評価結果と、マウスの髄腔内投与や皮内投与によって生じた掻痒関連行動(噛む、引っ掻く、舐めるの三行動)の総数は良い相関の一致が確認されたため、今後はマウスを用いずともin vitro評価によって化合物のスクリーニングが可能になると考えられる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 56 ページ: 128485~128485
10.1016/j.bmcl.2021.128485