研究領域 | 化学コミュニケーションのフロンティア |
研究課題/領域番号 |
20H04770
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北 将樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30335012)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 哺乳動物毒 / 化学コミュニケーション / 生物活性 / ペプチド / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
動物由来の天然毒にはユニークな構造や切れ味鋭い活性をもつものが多い。また加速進化により、有毒動物由来の生理活性ペプチドには多様性がみられる。このような新規神経毒の化学的解明は、薬理学、神経科学、精神医学など広範な生命科学の発展に寄与し、疼痛治療薬など新規薬剤の開発にも直結する。本研究では、化学生態学・進化学的にも興味深い、希少な哺乳類由来の有毒物質の構造と機能の解明と、より高活性な神経毒アナログの創製を目指した。またこれらの神経毒について、異種動物の類似物質と比較し、生物進化における神経毒の生物学・生態学的意義を探ることを目指した。 ・麻痺性神経毒 BPP 類の構造と機能:ブラリナトガリネズミの顎下腺から新規麻痺性神経毒ペプチドBPP1およびBPP2を単離した。ヒト脳に含まれる類似ペプチドとの比較により、BPP類の3つのジスルフィド結合の結合様式を推定した。またBPP2のヒト神経芽腫細胞に対するCa2+流入作用を見出した。この作用はN型チャネル阻害剤ω-コノトキシン類により抑制され、BPP類が神経系Ca2+チャネルを標的とすることが分かった。また絶滅危惧種の有毒哺乳類キューバソレノドンの捕獲に成功し、真無盲腸目のより正確な分子系統解析を達成した。 ・標的受容体―リガンド相互作用を解析する新手法の開発:ラベル支援レーザー脱離イオン化質量分析法(LA-LDI MS)で有用なアミドピレン基およびN,N-ジメチルアミノピレン基を開発し、これらの蛍光タグでラベル化したペプチドの選択的な検出とアフィニティー精製に成功した。またビオチン・アビジンの系をモデルとした標的分子におけるリガンドの結合様式を高精細に解析できる新手法を提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BPP類の化学合成はほぼ完成に近づいており、天然品との構造および機能の比較を次年度内に達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
BPP類からさらに発展させる研究として、ヒト脳内に発現している類似ペプチドも化学合成し、その構造や機能を明らかにすることで、トガリネズミの進化と毒の化学進化を理解することを目指していきたい。
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