公募研究
動物由来の天然毒は,フグ毒テトロドトキシンなどユニークな構造や切れ味鋭い活性をもつものが多い。また加速進化により,有毒動物の生理活性ペプチドには構造・機能に多様性がみられる。これらの毒は生命科学の研究ツールや,新たな医農薬の開発にも重要である。本研究では食虫動物トガリネズミ由来の麻痺性ペプチドBPP類の二次構造を決定し,合成標品を用いて詳細な生物活性を解明し、痛覚過敏や神経因性疼痛など,本物質が引き起こす痛み伝達に関わる新規作用機序の理解を目指した。さらに,異種の哺乳類がもつ類似物質と構造や機能を比較し、独自に進化してきた種がもつ麻痺性神経毒(=化学コミュニケーション物質)の生物学・生態学的意義を探ることとした。BPP2を2つのセグメントに分けてFmoc固相合成法で調製し、これらをNCL法で結合した。Cys残基の3種類の保護基の段階的な除去とS-S結合の形成により、全長53アミノ酸残基のBPP2の合成を達成したが、そのHPLC保持時間やUVスペクトルのパターンは天然品とは全く一致しなかった。これまでに構造決定したBPP類の一次配列が誤っている可能性を考慮して一次配列を再検討し、[Glu-Gly] の2残基が [Trp] の1残基であるなど、構造の訂正に至った。次いで一次配列改訂後のBPP2を再度合成した。Cys残基の保護基を1種類にして、NCL法で得られた一本鎖ペプチドの3組のSS結合を一挙に形成した。この際、Cysteine/Cystineを酸化還元触媒に用いたリフォールディング条件を工夫し、天然品とHPLC保持時間が一致する合成品がほぼ単一で得られた。現在、合成品BPP2の部分還元および選択的ラベル化により、SS結合様式の解析を進めている。また、合成品BPP2を用いた各種イオンチャネルに対する応答評価、ミールワーム麻痺活性試験についても今後評価する予定である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Chemistry Letters
巻: 51 ページ: 54~57
10.1246/cl.210615
Natural Product Research
巻: 無し ページ: 1~11
10.1080/14786419.2021.2023143
Molecular Nutrition & Food Research
巻: 65 ページ: 2100185~2100185
10.1002/mnfr.202100185
Chemical Communications
巻: 57 ページ: 10540~10543
10.1039/D1CC04259A
https://mkita64.wixsite.com/mysite