本研究は、有機合成化学を基盤とした生物有機化学研究からのアプローチにより、粘膜免疫系において多様な機能を担うmucosa-associated invariant T(MAIT)細胞の機能を制御するMHC-Ib-related protein(MR1)タンパク質の新規リガンドの創製を目的としている。本年度はこれまでの構造活性相関の情報を元にドッキングシミュレーション、構造展開を実施した。また、化合物の機能を評価する新たなアッセイ系の開発を行った。 (1)昨年度に引き続き、MR1リガンドとして知られる微生物代謝物5-OP-RUとその誘導体の活性情報を元に、ドッキングシミュレーションを実施した。その結果、MR1-リガンド-TCR複合体形成時における相互作用の鍵となるアミノ酸残基を同定するとともに、活性制御に関わる新たな作用点を見出した。 (2)これまでの構造展開とドッキングシミュレーションの結果を元に、既知リガンド5-OP-RU、Ac-6-FP、RL-7-Meからの構造展開を実施した。Ac-6-FPの二環性構造と5-OP-RUのリビチル基を含むハイブリッド化合物を合成し、評価を行った。各種二環性構造の探索とリビチル基の導入位置を検討した結果、中程度の活性を示す新規化合物の取得に成功した。また、中程度のMAIT細胞活性化作用を示すリガンドRL-7-Meの構造を元に構造展開を行った。様々なヘテロ環構造を探索するとともに、MR1のリガンド結合ポケットに含まれるLys43側鎖と共有結合を狙ったホルミル基等の導入検討を行った。その結果、これまでに報告されている化学的に安定なリガンドとして、最も高活性を示すリガンドの取得に成功した。 (3)MAIT細胞を活性化するリガンドを探索するための新たな評価系を開発した。本評価系を用いて、これまでに合成したリガンドの機能評価を実施した。
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