研究領域 | 化学コミュニケーションのフロンティア |
研究課題/領域番号 |
20H04775
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木谷 茂 大阪大学, 生物工学国際交流センター, 准教授 (10379117)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放線菌 / 化学コミュニケーション / 二次代謝シグナル |
研究実績の概要 |
多彩な生理活性物質を二次代謝産物とする放線菌において、本産物の真の生物学的意義は不明である。また、放線菌の二次代謝クラスターの多くは休眠状態にあり、魅力的な生理活性物質が未発掘である。本研究では、放線菌二次代謝を誘導するシグナル分子に着目し、その誘導現象を解明すると共に、休眠天然物を覚醒する技術を開発することにより、シグナルトーク系の多様性解明とその新規物資生産への応用を目的とする。 本年度は、二次代謝シグナル産生菌を用いた共培養が、各種放線菌における休眠天然物生産を覚醒させるかを検討した。放線菌50種を二次代謝シグナル産生菌と非接触共培養させたところ、18%(9菌株)の放線菌が共培養に応答して、その二次代謝を変化させた。その内、4菌株は共培養時にのみ化合物の生産を開始し、残りの5菌株では既存物質の生産性が共培養により向上していた。共培養時にのみ化合物生産が検出された4菌株について精査したところ、1つの化合物生産は二次代謝シグナルに依存することが分かった。 また、研究代表者が単離した海綿共生放線菌ST9株が放線菌Streptomyces lividansの色素系抗生物質の生産やエバーメクチン生産菌Streptomyces avermitilisの代謝物変動を誘起する現象を見出した。このST9株の細胞壁を解析したところ、休眠二次代謝を誘導することで知られるミコール酸は含まれていなかったため、ST9株は新たな二次代謝シグナルを有する可能性が示唆された。次に、ST9株の16s rDNAを解析した結果、ST9株はBlastococcus属放線菌であることが分かった。 加えて、二次代謝シグナル産生菌の培養条件を検討していたところ、新規ポリエン系物質が生産されることが分かり、その構造同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次代謝シグナル産生菌を用いた非接触共培養により、二次代謝シグナルに依存する生産覚醒系と依存しない系を見出したこと、また、Blastococcus属海綿共生放線菌が既知シグナルとは異なるメカニズムにて、休眠二次代謝を覚醒誘導させる現象を見出したことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
二次代謝シグナル産生菌との共培養によって生産覚醒された各種化合物を同定することを目指す。一部の覚醒化合物の精製スキームは確立しつつある。次に、連鎖型のシグナルトーク系を見出すため、覚醒化物質の二次代謝誘導能を解析する。一方、これらの放線菌が二次代謝シグナル産生菌の代謝物生産に与える影響を検討し、双方向型シグナルトークの可能性を検証する。加えて、Blastococcus sp. ST9株が生産覚醒するS. avermitilisの代謝物の構造を同定し、その生産覚醒メカニズムを解析する。
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