メダカ味覚受容体T1r2a/T1r3リガンド結合ドメイン結晶への結合を見出していた塩化物イオンについて、蛍光共鳴エネルギー移動法によるT1r2a/T1r3リガンド結合ドメインにもたらす作用を解析した結果、同受容体応答を誘起するアミノ酸と同等の構造変化を引き起こすことを明らかにした。また、示差走査蛍光測定により結合親和性を解析することで、結合と構造変化が概ね同濃度域で起こることを確認した。さらに、塩化物イオンの結合部位の構造と配列解析から、この塩化物イオン結合はT1r1-T1r3受容体、T1r2-T1r3受容体両者に共通した作用をもたらすことが示唆された。 さらに、示差走査蛍光測定により、メダカT1r2a/T1r3リガンド結合ドメインおよび試料調製を達成しているT1r1-T1r3リガンド結合ドメインを用いて、リガンドスクリーニングを実施した。その結果、これまでに両受容体への結合が明らかになっていたアミノ酸とは全く異なる化学構造を持ちながら、いずれのタンパク質にも共通して結合を示す生理活性物質を見出した。 さらに、試料調製条件を確立していたT1r1-T1r3リガンド結合ドメインについて、精製条件と結晶化条件を改善した結果、結晶サイズは依然小さいものの、これまでに得られてきた結晶よりも改善が見られ、10 um x 40 um程度の結晶を得ることができた。SPring-8のマイクロフォーカスビームラインBL32XUの利用により、微結晶データ収集の手段であるsmall-wedgeデータ収集を行うことで、約3.5A分解能の回折強度データを収集した。
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