研究実績の概要 |
ラット由来グルタミン酸受容体AMPARのリガンド結合ドメイン(LBD)を研究対象とし、そのアロステリック効果に関わる分子内構造ネットワークを解明するための研究を推進した。具体的には、NMR検出感度の高い側鎖メチル基を有するアミノ酸(Ile, Leu, Met, Val)をプローブとして選択し、各アミノ酸残基を構造的変化が小さいアミノ酸に置換した変異体(例えばIle→Leu等)を複数作製する。側鎖の構造を僅かに変化させる保存的変異が LBD に誘起する微小な摂動は、静的な分子構造を大きく変化させなくても、当該残基を含む分子内ネットワークが構築されている構造領域の動的構造に影響を与えることがあれば、化学シフト変化として NMR を用いて検出することが可能であると考えられる。一方、変異導入残基と近傍の残基との相互作用が希薄で、当該残基が構造的に孤立している場合は、保存的変異による影響は周囲に及びにくく、化学シフト変化は変異した残基局所に限定的に観測されると考えられる。今年度は10種の保存的変異体を作製、NMR試料調製を行い、変異に伴う化学シフト摂動データを取得した。現時点での素データから、変異部位により化学シフト摂動を受ける領域の大小に差が見られ、想定しているような構造ネットワークの存在がNMRにより検出できる可能性が示された。次年度は、さらなる保存的変異体の作製・データ取得を行うとともに、得られたデータを相関解析により統合することで、構造ネットワークの検出を行う。
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