土壌細菌Collimonas fungivorans Ter331株は、栄養欠乏状態で真菌の菌糸を溶かし資化する。そのため、“fungus-feeding bacterium”(真菌資化性細菌)とも呼ばれている。応募者は本新学術領域の第1期の公募研究で、C. fungivoransが産生する抗真菌性ポリインcollimonin類の単離・構造決定に成功している。また、真菌拮抗性細菌Pseudomonas protegens MAFF212077株からも抗真菌性ポリイン類を発見している。興味深いことに、これらのポリイン類は、貧栄養条件かつ培地にN-acetylglucosamine(GlcNAc)が含まれているときに、高生産される。GlcNAcは真菌細胞壁の構成成分キチンの単糖単位である。すなわち、細胞壁断片を介してポリイン類が産生誘導されるという双方向性の化学コミュニケーションが存在する。 本年度も、collimonin類の生合成の解明を中心に進めた。col遺伝子クラスター中に存在する遺伝子の欠損株を追加で作製し、新規生合成中間体を取得した。重要な酵素遺伝子については大腸菌で発現し、詳細な機能解析を進めた。その結果、collimonin類のユニークな生合成機構の多くを解明することができた。いくつかの反応については、未だ詳細が分かっていない。P. protegens MAFF212077株が産生するポリインprotegenin類について、生合成機構と植物保護作用について調べた。その結果、本菌株が卵菌類に対して示す強力な拮抗作用にprotegenin類が大きく寄与することが判明した。また、これらの産生がGacSクオラムンセンシング機構の制御下にあることも判明した。
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