研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
20H04793
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩井 智弘 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (30610729)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 固体触媒 / 分子触媒 / ハイブリッド触媒 / ビピリジン配位子 / 電子移動反応 / イリジウム触媒 / ニッケル触媒 |
研究実績の概要 |
【ポリスチレン架橋ホスフィン】我々は、高分子トポロジー制御に基づき、活性種の空間的孤立化に有効なポリスチレン架橋ホスフィンを開発し、いくつかの遷移金属触媒反応でその有効性を明らかにしている。本年度は、強固なシス型キレート配位を特徴とするPS-DPPBz配位子が、イリジウム触媒による含窒素複素環化合物のアクセプターレス脱水素化反応に有効なことを見出した。従来触媒で利用の制限されていたN-置換インドリンに対する適用性が広い。同イリジウム触媒は、脱水素化の逆反応である分子状水素による含窒素ヘテロアレーンの水素化反応にも有効なことから、有機ハイドライド水素貯蔵技術への応用が期待される。 また、配位中心にトリフェニルホスフィン骨格を有する多孔質ポリスチレンモノリス固定化パラジウム触媒が、フロー法による塩化アリールの鈴木-宮浦カップリングに適用できることを見出した。本触媒は表面にμmオーダーの細孔を有し、リアクター内での溶液の迅速な透過と攪拌に有効である(九州大学・三浦佳子教授との共同研究成果)。
【ダンベル型ビピリジン】2,2’-ビピリジンは、一電子酸化還元プロセスを含むニッケル触媒クロスカップリングの有効な配位子である。活性種はビピリジン-モノキレートニッケル種であると考えられているが、動的配位平衡によって様々なニッケル種が生じ、その結果、触媒性能が低下する。我々は、遠隔立体効果が選択的なモノキレート化と反応空間の確保に有効であるという考えのもと、ビピリジンC5およびC5’位にトリアリールメチル基が置換したダンベル型ビピリジンを設計・合成した。これら新型配位子は、臭化アリールと臭化アルキルとのニッケル触媒交差求電子剤カップリングや、臭化アリールとアルキルカルボン酸とのニッケル/光酸化還元触媒協働脱炭酸カップリングで既存のビピリジン系配位子よりも優れた配位子効果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一電子移動型クロスカップリングに有効なダンベル型ビピリジン配位子を開発し、当該反応における新しい触媒設計指針を示すことができた。本研究成果は、国際学術論文誌である Chemistry-A European Journal に掲載されるととに、Cover Pictureに採択された。また、固体の特性を活かした独自の触媒設計を基盤とし、領域内共同研究(九州大学・三浦佳子教授)を通じて、フロー合成に適用可能な多孔質高分子触媒の開発に成功した。これは、有機金属化学・高分子化学分野の融合による成果である。
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今後の研究の推進方策 |
金属酸化物の半導体特性を活かした固定化金属触媒の開発に取り組む。固体と金属錯体触媒間の円滑な電子移動の実現のため、適切な共役リンカーを介してこれらを連結する計画である。
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