近年の医薬リード化合物の枯渇問題を受け、特異かつ複雑な骨格を有する生物活性天然物に注目が集まっている。しかし、高度に官能基化された天然物の合成は、現代の精密有機合成化学をもってしても容易ではなく、満足のいく量的供給や構造活性相関研究を視野に入れた誘導体合成は困難である。このような背景のもと、本研究では、分子合成オンデマンドを実現するタンデム触媒の反応の開発と、確立した新たな方法論を基盤とする高次構造アルカロイドの迅速合成法の確立を目指し、研究に取り組んでいる。金触媒を用いたオートタンデム触媒反応を基軸とする多環性アルカロイドの迅速合成に関しては、独自に開発したドミノ型環化反応を基軸とし、海産グアニジンアルカロイドであるイソクランベシジン800のスピロ構造を含む4環性骨格の構築に成功した。銅触媒を用いたアシスト型タンデム触媒反応を基盤とした高次構造アルカロイドの迅速合成においては、本年度はシャルテリンCの合成研究に取り組んだ。本合成研究において、我々がデオキソアポディンの合成研究の過程で見出したインドールのC-Hアルキル化を適用することで、標的天然物の外枠の骨格を成す12員環の構築に成功し、シャルテリンCの世界初の不斉全合成の足がかりを築いた。
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