研究実績の概要 |
2020年度の研究ではシリカ表面にIr錯体を固定した触媒を新たに開発し、これが芳香族C-H結合活性化反応に高性能を示す触媒となることを見出した。Ir錯体とシリカ表面をつなぐメチレン鎖の長さが触媒性能に及ぼす影響を詳細に解析し、炭素数1のメチレン鎖を用いると、炭素数4を用いた時と比べて大幅に活性が向上することが分かった。さらに、シリカ表面のSi-OH基の存在による反応加速や、同一表面に第三級アミノ基を固定化することによる活性の向上に関しても有益な知見を得た。さらに、芳香族基質の有する置換基と反応性に関する関連を調査したところ、アミノ基を固定化した触媒ではベンゾニトリル・メチルベンゾエイトの反応が特異的に加速されていることが分かった。FTIR測定等の結果から、共存するアミノ基が極性官能基をもつ基質と相互作用するためと思われる。これらの成果について査読付き学術誌に発表した(ACS Catalysis, 2020, 10, 14552)。また、固体酸触媒と担持金属触媒の触媒粒子間での協奏効果として、粒子間水素移動を発見し、これがアルカンの活性化反応に有効であることを見出した。固体酸表面で活性化されたアルカンから引き抜かれた水素原子が、粒子間を移動することで担持金属触媒に到達し、ここで水素原子の再結合が起こることで水素分子が生成する反応機構を提案した(JACS Au, 2021, 1, 124)。固体表面の特異的な機能を活用した高難度触媒反応の開発に向けて検討を進めている。
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