研究実績の概要 |
6,6”-bis(phosphino)terpyridine誘導体を鋳型配位子として用いることで,中性1価13族金属(13族メタリレン)を配位子として持つM-Rhハイブリッド錯体(M = Al, Ga, In)の合成と構造解析に成功した。さらにこれらの触媒機能について検討した結果,Ga-Rhハイブリッド錯体1を触媒として用いるとニトリルの化学選択的ヒドロシリル化反応が円滑に進行することを見出し,オキシム誘導体の効率的合成法を開発することに成功した。すなわち,2-ナフトニトリルに対して1 mol%の1と1.2倍モル量のジフェニルシランを加熱条件下で作用させると,モノヒドロシリル化体であるN-シリルアルジミンが優先して生成する。この反応粗生成物に対して過剰量のヒドロキシルアミン塩酸塩を加熱条件下で作用させることで,オキシムへ誘導化して単離することができる。本反応は一般的な遷移金属触媒反応とは異なり,低反応性分子であるニトリルに対して選択的に進行し,アルジミンの過剰還元体であるアミンはほとんど生成しない。また,二金属ハイブリッド錯体としてAl-RhやIn-Rh錯体,あるいは一般的なロジウム錯体を触媒として用いると,収率が低下したり,アミンの生成量が増加したことから,高い反応性と化学選択性を実現するためには1のガリレン配位子が必須であることが明らかとなった。また本反応は,臭素やエステル,アミド,ヘテロ芳香環を持つ基質にも適用可能であり,対応するオキシムを選択的に得ることができる。本反応は,ニトリルを原料とするオキシムの直接的合成法として有用性が高い。本結果はGa-Rhハイブリッド触媒の特異な触媒機能を実証したものとして大きな意義を持つ。
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