研究実績の概要 |
6,6”-ビス(ジフェニルホスフィノ)テルピリジンを配位子に用いることで、中性Rh-Pd二核錯体、PMe3配位子をロジウム上に持つカチオン性Rh-Pd二核錯体、並びにPPh3配位子をパラジウム上に持つカチオン性Rh-Pd二核錯体の合成と構造解析に成功した。これは従来報告例のないロジウム(III)とパラジウム(0)を金属源とした二核錯体合成法であり、N,P-多座配位子の特徴を活かして異種遷移金属二核錯体の効率的合成を実現した点で意義深い。またRh-Pd二核錯体のUV-VisスペクトルとTD-DFT計算から、錯体の光物性と酸化還元特性を明らかにした。その結果、いずれの錯体も可視光照射による励起が可能であること、並びに多段階の可逆な酸化還元が可能な求電子的錯体であることが分かった。さらに合成したRh-Pd二核錯体の光応答性や求電子性を利用した反応開発を目指して検討した。その結果、カチオン性二核錯体にジメチル亜鉛やトリメチルアルミニウムを作用させると、ロジウム上で配位子置換反応が進行し、メチルロジウム錯体が生成することを見出した。またRh-Pd二核錯体のCO2還元反応に対する触媒活性を評価した結果、いずれの錯体もヒドロシリル化反応に対してTON = 2500程度の高い触媒活性を示し、従来のAl-Pd二核錯体を上回る触媒活性を有することを見出した。さらに中性Rh-Pd二核錯体は、従来のAl-Pdではできなかった、CO2の水素化反応にも活性を示すことを見出した。また、重ピリジン溶媒中で中性Rh-Pd二核錯体と水素ガスを反応させることで、このCO2水素化反応における鍵活性種と考えられるパラジウムヒドリド錯体の観測に成功した。
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