公募研究
本研究では、複数の触媒活性点を一度に創出可能な複合酸化物と、表面に設けた金属ナノクラスターに効果的に配位する有機配位子をハイブリッド化し、目的の多段階物質変換反応を志向した「表面不斉反応場」の創出を目指した。(1) まず、低温での水素還元―酸素再酸化が可能なCr-Rh-Ce複合酸化物に対し、表面に存在するCr種、Rh種が協同的に働く触媒反応評価を行った。Cr-Rh-Ce複合酸化物は、一酸化炭素(CO)を還元剤とする一酸化窒素(NO)の還元反応にて、Crおよび/またはRhを含まない酸化物と比較して、より低温で触媒特性を発現した。種々のin-situ構造解析により、Rh種がNOとCOの活性点、Cr種が酸化物ナノドメインとして、NOからCOへ酸素を効率的に渡すメディエーターとして機能することを推定した(論文執筆中)。(2) 本Cr-Rh-Ce複合酸化物を水素還元処理すると、その表面に微小Rhナノクラスターが形成されることを見出しており、今回、これにN-ヘテロサイクリックカルベン (NHC) 配位子 (1,3-dicyclohexylimidazole-2-ylidene: ICy) を修飾した触媒、ICy修飾Cr-Rh-Ce複合酸化物を調製した。この触媒は、NHC未修飾では発現しない、シクロヘキセノンとフェニルボロン酸による1,4-アリール付加反応が新たに活性を発現することを見出した。一方、Crおよび/またはRhを含まない酸化物に対し同様にNHCを修飾した触媒では、Rhが含まれている場合のみ触媒反応が進行したことから、Rhが反応に関与していることが推定された。各種対照実験、及びNHC配位子修飾前後のXAFS、XPS、蛍光測定により、「カルベン」としてのNHCとRh種との相互作用が、反応の促進に大きく関与していることが推察された。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症による影響で、当初予定していた不斉N-ヘテロサイクリックカルベン (NHC) 配位子の合成、及び不斉NHC配位子修飾複合酸化物の調製実験が遅れたため。
ICy修飾Cr-Rh-Ce複合酸化物の1,4-アリール付加反応活性発現のメカニズム解析を引き続き進めるとともに、不斉N-ヘテロサイクリックカルベン (NHC) 配位子の合成を引き続き進め、不斉NHC配位子修飾複合酸化物の調製と触媒反応を行う。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
ACS Catalysis
巻: 10 ページ: 6309-6317
10.1021/acscatal.0c01074