研究実績の概要 |
本研究では、複数の触媒活性点を一度に創出可能な複合酸化物と、表面に設けた金属ナノクラスターに効果的に配位する有機配位子をハイブリッド化し、目的の多段階物質変換反応を志向した「表面不斉反応場」の創出を目指した。 (1) N-ヘテロサイクリックカルベン (NHC) 配位子 (1,3-dicyclohexylimidazole-2-ylidene: ICy) を水素還元処理Cr-Rh-Ce複合酸化物に修飾した触媒 (ICy修飾Cr-Rh-Ce複合酸化物) で発現する1,4-アリール付加反応の反応機構について詳細に検討した。ICyはCr-Rh-Ce複合酸化物表面に生成するRhナノクラスターに「カルベン」として配位していることを確かめたが、XPSからはNHC修飾/未修飾でRhナノクラスターの電子状態に大きな違いは見られなかったことから、本系ではNHCによる電子供与効果は予想に反し小さいことが示唆された。そこで、NHC修飾/未修飾Cr-Rh-Ce複合酸化物触媒上で起こる反応経路のDFT計算を行った。ICy未修飾のCr-Rh-Ce複合酸化物ではRhナノクラスター上でのC-C結合形成過程が律速段階と計算されたのに対し、ICyを修飾すると、律速段階がフェニルボロン酸の開裂過程に移り、活性化エネルギーが大幅に低下することを明らかにした。(論文執筆中) (2) 表面反応場での不斉反応を目指し、表面のRhナノクラスターとセリア表面双方に相互作用する不斉NHC配位子の開発を進めた。NHCの側鎖に含窒素芳香環を有する新規不斉NHC配位子の合成に成功したとともに、種々の不斉NHC配位子と共にCr-Rh-Ce複合酸化物に固定化を行い、不斉1,4-アリール付加反応をはじめとする不斉反応活性の評価を進めた。 (3) 研究者が得意とする構造解析法(XAFS)により、錯体触媒の価数決定の共同研究を行った。
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