研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
20H04815
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
加納 太一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40372560)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アミン触媒 / 有機触媒 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
光学活性なアミン触媒とカルボニル化合物から生じるエナミン中間体を求核剤として利用する反応では、さまざまな求電子剤が用いられてきたが、過酸化ベンゾイル(BPO)を求電子剤として用いると、カルボニル化合物のα位がベンゾイロキシ化された生成物が得られる。このとき、当研究室の開発した2-トリチルピロリジン触媒を用いると高いエナンチオ選択性で生成物が得られる。2-トリチルピロリジンは合成時の光学分割が煩雑という問題があったが、その後の検討の結果、trans-ヒドロキシプロリンから簡便に得られる触媒を用いると、より高い収率で生成物が得られることを見出している。この不斉ベンゾイロキシ化反応で得られるα位に酸素官能基をもった光学活性なアルデヒドを、スレオニン由来のアミン触媒によるジヒドロキシアセトン誘導体との不斉アルドール反応の求電子剤として利用したところ、三連続した不斉点をもったシン体のアルドール生成物が得られた。3-ベンジロキシプロパナールを求核剤に用いれば、フルクトース誘導体が得られるが、ごく微量の生成物しか得られなかった。興味深いことに、アルデヒドのベンジル基をフッ素化されたジフェニルメチル基に置き換えると、中程度の収率ながらフルクトース誘導体が高いエナンチオ選択性で得られた。一方、環状のジヒドロキシアセトン誘導体とプロリン触媒を用いた反応は全く進行しなかった。ジヒドロキシアセトン誘導体が酸に極めて不安定で、ベンゾイロキシ化反応で副生する安息香酸で分解していたことから、一段階目の反応後に溶液を塩基性イオン交換樹脂に通したところ、アンチ体のアルドール生成物を高いエナンチオ選択性で得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
α位がベンゾイロキシ化されたラセミ体のアルデヒドを二段階目の反応の求電子剤として用いると、低収率ながら目的の立体異性体が高い立体選択性で得られることが判明した。収率が低いのはラセミ体のうち一方しか反応しないためであることから、α位がベンゾイロキシ化されたアルデヒドの代わりに、ラセミ化が進行しやすいα位が臭素化されたアルデヒドを用いた。その結果、一方のエナンチオマーが優先的に反応するものの、ラセミ化によってもう一方のエナンチオマーから供給が続くため、50%を超える収率で目的生成物が高立体選択的に得られることが明らかとなった。これは動的速度論的光学分割の可能性を示す結果であり、2段階の反応で2種類の光学活性なアミン触媒を用いなくても、1段階目の反応はラセミ体のアミン触媒を利用できるため、計画していた連続反応と比較してより実用性の高い連続反応となる。
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今後の研究の推進方策 |
動的速度論的分割を利用した連続反応が実現可能と判明したことから、α位が臭素化されたアルデヒドに対する光学活性なアミン触媒による不斉アルドールで三連続した不斉点をもった生成物の合成を試み、その基質適用範囲を詳細に調べる。またα位の臭素をフッ素、塩素、ヨウ素といった他のハロゲン元素に変えて、同様の動的速度論的分割が可能かを調べる。
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