研究領域 | 分子合成オンデマンドを実現するハイブリッド触媒系の創製 |
研究課題/領域番号 |
20H04816
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 智也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10378804)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドミノ触媒反応 / 二重結合異性化反応 / ホモアリルアルコール / 不斉アリルホウ素化反応 / 末端アルキン |
研究実績の概要 |
筆者らは、4,4-ジ(ボリル)-1-ペンテンをアリルホウ素化試薬の前駆体として用いると、三置換アルケン部位を有するホモアリルアルコールが立体選択的に得られること見出した。また二重結合の移動に用いる遷移金属触媒を適切に選択することで、三置換アルケン部位の幾何を作り分けることができた。すなわち、二重結合異性化触媒としてGrotjahn触媒([CpRu(L)(MeCN)]PF6)を用いると、(E)-ホモアリルアルコールが環状ボロン酸エステルとして収率84%、93%で得られ、一方で、[Pd(Br)(PtBu3)]2を用いると、系中で生成する(E)-ホモアリルアルコールのアルケン部位がPd触媒の作用によりさらにE/Z異性化し、(Z)-ホモアリルアルコールが収率68%、96%で得られた。さらに、筆者らが開発したドミノ触媒反応を用いて、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤として重要な放線菌由来ポリケチド (+)-trichostatin Aの類縁体として、最近、構造決定された (+)-isotrichostatic acidや(-)-isotrichostain RKを不斉合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に実施する予定であった、4,4-ジ(ボリル)-1-ペンテンをアリルホウ素化試薬の前駆体として用いる反応において、生成物として得られるデルタ位にボリル基が置換した三置換オレフィンの両方の幾何を作り分けることができる方法論を確立し、これを利用した天然物化合物の不斉合成を終えることができたため。また、この成果を学術雑誌において報告することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画で書いた、ハロゲン原子を持つanti-ホモアリルアルコールの立体選択的合成を行いといた考えています。海洋天然物にはハロゲン原子を持つものが多く発見されています。最近、Burns(米)はチタン触媒を用いたアリルアルコールの不斉ジハロゲン化反応を報告しているが、ハロヒドリンを不斉合成する研究は立ち後れているのが現状であります。(i)そこで本研究では、プロパルギルハライドを出発原料に用いてハロヒドリン部位を持つanti-ホモアリルアルコールの不斉合成を検討します。一般にアルケニルハライドは、超共役のため(Z)体が(E)体に比べて安定であることが知られています。そのため(Z)体はメタセシス反応による合成例が報告され、結果的に、syn-ホモアリルアルコールが得られています。一方、本研究では、系中で平衡的に生成する(E)体を用いて、anti-体の合成を計画しています。(ii)さらに、α位にハロゲン原子を持つ新試薬(4,4-ジボリル-4-ハロ-ブタ-2-エン)の調製とそれを用いた不斉アリルホウ素化反応を試みます。
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