研究実績の概要 |
i) 筆者は末端アルキンからデルタ位にボリル基が置換した(E)体のanti-ホモアリルアルコールをエナンチオ選択的に合成する方法(ドミノ触媒反応)を開発している。この反応の応用展開として、強力な抗癌活性を示す海洋産マクロライド(-)-Dictyostatinの全合成研究を行なったところ、これまでの最適条件では、エナンチオ選択性に難があることがわかった。そこでキラルリン酸触媒を様々検討したが、エナンチオ選択性は向上しなかった。
ii) 3-クロロ-1-ボリルプロパ-1-エンの二重結合異性化反応をイリジウム触媒を用いて検討したところ、反応機構的に稀な1,3-クロロ移動が進行し、エネルギー的に不利なα位にクロロ基を持つアリルホウ素化試薬(3-クロロ-1-ボリルプロパ-2-エン)が、平衡的にごく少量生成することを見出しました。そこで、あらかじめ反応系中にアルデヒドを加えておいたところ、デルタ位(オレフィン上)にクロロ基(Z体)が置換したホモアリルアルコールが得られた。
iii) Carretero(西)の報告(OL 2013, 15, 2054)に従い、SO2Py基を利用して末端アルキンから2-ボリルペンタ-1,4-ジエンを合成した。ついで、これを出発原料に用いてホモアレニルアルコールの不斉合成を試みた。しかし、期待していたような二重結合の異性化反応は進行せず、目的の生成物は得られなかった。
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