π共役有機化合物は、その光電子的特性から、有機材料の分野等において幅広く応用が期待されているが、既存の合成方法では、アクセス可能な分子骨格に大きな制限がある。申請者は近年、新規反応の開発により、従来法では合成困難な新しいπ共役化合物の効率的合成を達成し、とくに、複数の分子変換反応を連続的に行うハイブリッド型の反応系の開発に成功している。このような背景のもと、本年度における研究では、新しいπ共役分子構築法の有効なハイブリッド触媒系へのさらなる進化を目指し、これまでの成果を踏まえて、主に以下の項目について研究を実施した。 (1) まずは、高度に縮環したケイ素架橋π共役化合物の迅速合成を目指し、独自に開発したロジウム触媒を用いた縫合反応を連続的に利用する合成法の開発を行った。その結果、比較的シンプルな原料の組み合わせから、短工程で最大21個の環が縮環したラダー型の新規π共役化合物を収率よく合成することに成功した。合成した一連の化合物の物性評価も行い、可逆的に多電子受容可能な化合物群であることを実験的に明らかにした。 (2) また、新たなπ共役高分子化合物へ効率的にアクセスする方法として、前年度までに開発した「縫合重合」に、続くアルケンの異性化ブロセスをハイブリッドした新規重合系の構築により、従来法では合成が困難な繰返し単位をもつ発光性ポリ(アリーレンビニレン)の合成法の開発に成功した。この手法を用いることで、様々な(ヘテロ)アレーンで連結したジイン、トリイン、 テトラインから、新しいポリ(アリーレンビニレン)が得られ、その耐熱性や光学的性質についての知見を得ることもできた。
|