本研究では分子触媒のin silicoでのデータ駆動型設計法の提唱・構築を目的としている。とくにハイブリッド触媒を設計対象とする。軸となる手法は、分子場解析と呼ばれる3次元構造活性相関(3D-QSAR:Quantitative Structure-Activity Relatio nship)手法である。不斉触媒反応における分子場解析とは、生成物の鏡像異性体比と、触媒など分子の3次元構造から計算した分子構造情報(分子場)との間の回帰分析である。作成した回帰式の回帰係数の値の大小からエナンチオ選択性にとって重要な構造情報を抽出・可視化できる。どこに置換基を導入すれば選択性が向上するか一目でわかることから効率的に不斉触媒を設計できると期待される。これまでに不斉触媒反応におけるデータ駆動型分子設計のための、分子場解析に基づく方法論の基礎を固めることに成功している。本研究では、分子場解析によるデータ駆動型触媒設計に基づき有機合成の難題である複雑な反応(立体分岐型不斉合成)の制御が可能であることを見出した。また、これまでに解析に用いていたエナンチオ選択性の実験値ではなく、量子化学計算により算出したエナンチオ選択性の値と、対応する遷移状態の構造を用いて分子場解析を行ない、実験によりエナンチオ選択性が向上することを確認した。本成果を論文の形にまとめることができた。本研究で構築に成功したin silico触媒設計手法は、実験データの収集が難しい様々な系に適用可能であり、ハイブリッド触媒系のような複雑な反応の制御を促進することが期待される。
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