研究領域 | 代謝アダプテーションのトランスオミクス解析 |
研究課題/領域番号 |
20H04844
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今見 考志 京都大学, 薬学研究科, 特定研究員(特任講師) (30528344)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 翻訳 / リボソーム / 新生鎖 |
研究実績の概要 |
本年度は、リボソーム上で合成されている新生ポリペプチド鎖の単離技術の開発と最適化をおこなった。ピューロマイシンはアミノアシルtRNAの類似体で あるため、リボソームのAサイトに入り込み、合成中の新生ポリペプチド鎖に結合する(Pestka Annu. Rev. Microbiol. 1971)。本研究では、こ のピューロマイシン-新生ポリペプチド鎖複合体を免疫沈降し、LC/MS/MSと組み合わせて大規模に新生鎖をプロファイルできるテクノロジーを確立することを目的とした。
具体的には必要タンパク質試料量や抗体量、ピューロマイシン処理時間などの最適化をおこなった。その結果、細胞ライセート(タンパク質量 250マイクログラム)に対して、15マイクログラムの抗体を使用し免疫沈降することで、ほほ全ての新生鎖(ピューロマイシン化タンパク質)をライセートから回収できることをWBで確認した。また、LC/MS/MSと組み合わせることで、約3000種の新生鎖の同定・定量に成功した。さらに、同定ペプチドのタンパク質上の位置を調べたころ、N末端側に濃縮されていることを確認した。これは、リボソームは新生鎖をN末端からC末端にかけて伸長することと一致し、同定されたペプチドは新生鎖由来であることを示している。
本法に関する論文は現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
何よりも新生鎖をプロテオームワイドに同定・定量可能な技術が確立でき、論文として投稿済のところまで達成できたことは大きい。さらに既存の類似法と比較しても、本法は安価であり、超遠心等を用いたリボソームの精製やクリック反応を利用しない簡便な方法であることも利点である。他方、本法の適用範囲は現在のところ培養細胞までであり、モデル生物を用いたin vivoの系でもワークする技術も確立していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本法の技術が確立されたので、来年度は細胞に様々な摂動(例えば薬剤処理)を与えた際の翻訳応答を系統的に捉えていきたい。具体的にはキナーゼ阻害薬やストレス刺激を与えた際の翻訳応答をグローバルに定量する。また培養細胞のみならず、in vivoでの翻訳応答も捉えていきたい。具体的には、ゼブラフィッシュ胚やマウス脳への応用を考えており、現在共同研究を開始しようとしている。
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