• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実績報告書

顔面原基のプロポーションが哺乳類系統でだけ激変した背景にある、発生上の制約

公募研究

研究領域進化の制約と方向性 ~微生物から多細胞生物までを貫く表現型進化原理の解明~
研究課題/領域番号 20H04858
研究機関東京大学

研究代表者

東山 大毅  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (40816625)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード脊椎動物 / 進化 / 発生 / 頭部 / 発生 / 神経堤細胞 / 頭蓋骨 / 発生拘束
研究実績の概要

脊椎動物は、同一セットの顔面原基の量的な曲げ伸ばしと組合せで顔面形態を作っている。これまでに我々は、祖先的に高度に保存された顔面原基の組合せパターンが、哺乳類に至る過程で大幅にシフトしているらしいことを比較形態学的に発見した。では、そんな稀な変化が哺乳類の系統特異的に生じた背景にはどんな発生現象があるのだろうか。
当該年度は、この現象の背景にある発生機構について考察する前に、この発生現象をDlx1-CreERT2マウス(顔面原基のうち上顎突起を特異的に標識できるマウス)を用いて実験的に証明し、論文として完成させた。その結果、哺乳類では、祖先の上あごの先や前上顎骨を構成していた発生原基が上あごから半独立した「鼻部」となり、代わりに哺乳類の口先はもともと頬を構成していた上顎突起の延長として形成されたことが分かった。これは、祖先的な顔面形成の制約を逸脱して新たな解剖学的結合関係をつくり、形態-機能的に新規な構造を成立させた、進化的新機軸の典型例と言える。
また、化石記録から、こうした顔面構造の入れ替わりは約1億年かけて漸進的に生じたことも分かった。咽頭胚期における顔面原基の位置と数は羊膜類で共通していることから、哺乳類とそれ以外の羊膜類との顔面形成の差は、顔面原基の量的な伸び方の差に還元できるはずである。では、その差は発生のいつ、どの発生原基にどれくらい現れるのだろうか。これを知るために、ニワトリやマウス胚の非破壊的な三次元イメージの取得をマイクロCTスキャンを用いて試みた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウィルス影響下において、当初予定されていたマイクロCTスキャンを用いたイメージングをはじめ共同研究がうまくいかず、また飼育マウスの規模縮小も余儀なくされたため、実験のスピードは大幅に遅れることになった。
ただし、同時期には当初の予定にはなかった非モデル動物の胚試料の取得に成功したり、新たな研究テーマ・共同研究の着想も得られた。当初の研究計画からは目に見えて遅れているものの、研究活動全体としては一定の進捗が見られた。

今後の研究の推進方策

哺乳類頭部の進化的成立については、専門的には説明不足な点があったことから、マウス、ソメワケササクレヤモリなどを用いて比較形態学的に詳細な点を補う論文を書く。
更に、コロナ禍による移動制限の治まり次第、胚のマイクロCTスキャンによる三次元撮影を再開し、咽頭胚期においてどの構造がどの程度伸長するかを定量する。
また、顔面原基が最も大幅に変化しているであろうと推測される咽頭胚期に関し、マウス胚顔面原基での空間トランスクリプトームをおこなう。これにより、伸長する顔面原基のどこにどんな遺伝子が発現しているのかを時空間的に突き止める。これは当初の研究計画を立てる段階から希望していた実験ではあるものの、その予算や実験規模などから実現可能性は低いとみて断念していた。しかし、当該年度に同新学術領域内における他の班との共同研究の計画がまとまり、本実験に取り組むことが現実的となった。それでもなお現行の空間トランスクリプトーム技術ではマウスを対象にしたものが精々ではあるが、近い将来に他の動物との比較が可能になるとは十分に予想が出来、また顔面突起の伸び方の背景にどんな因子がかかわっているかを推定するうえでも非常に強力なツールとなりうる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] テュービンゲン大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      テュービンゲン大学
  • [雑誌論文] Embryonic evidence uncovers convergent origins of laryngeal echolocation in bats2021

    • 著者名/発表者名
      Nojiri Taro、Wilson Laura A.B.、Lopez-Aguirre Camilo、Tu Vuong Tan、Kuratani Shigeru、Ito Kai、Higashiyama Hiroki、Son Nguyen Truong、Fukui Dai、Sadier Alexa、Sears Karen E.、Endo Hideki、Kamihori Satoshi、Koyabu Daisuke
    • 雑誌名

      Current Biology

      巻: 31 ページ: 1353~1365.e3

    • DOI

      10.1016/j.cub.2020.12.043

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Comparative anatomy of the hepatobiliary systems in quail and pigeon, with a perspective for the gallbladder-loss2021

    • 著者名/発表者名
      HIGASHIYAMA Hiroki、KANAI Yoshiakira
    • 雑誌名

      Journal of Veterinary Medical Science

      巻: 83 ページ: 855~862

    • DOI

      10.1292/jvms.20-0669

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dlx5-augmentation in neural crest cells reveals early development and differentiation potential of mouse apical head mesenchyme2021

    • 著者名/発表者名
      Vu Tri H.、Takechi Masaki、Shimizu Miki、Kitazawa Taro、Higashiyama Hiroki、Iwase Akiyasu、Kurihara Hiroki、Iseki Sachiko
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: 1-15

    • DOI

      10.1038/s41598-021-81434-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of the lamprey velum and implications for the evolution of the vertebrate jaw2020

    • 著者名/発表者名
      Yokoyama Hiromasa、Yoshimura Miho、Suzuki Daichi G.、Higashiyama Hiroki、Wada Hiroshi
    • 雑誌名

      Developmental Dynamics

      巻: 250 ページ: 88~98

    • DOI

      10.1002/dvdy.243

    • 査読あり
  • [学会発表] 顔は発生原基の組合せ:哺乳類の鼻は爬虫類の口先2020

    • 著者名/発表者名
      東山大毅
    • 学会等名
      日本進化学会 第22回 オンライン大会 シンポジウムS03「表現型進化を制約しうる発生基盤」(招待講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] 顎って何だ?:哺乳類顔の進化からみた展望2020

    • 著者名/発表者名
      東山大毅, 栗原裕基
    • 学会等名
      日本動物学会第91回大会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi