公募研究
生物進化に対する制約のひとつとして、揺らぎの大きな表現型が進化しやすいという傾向(揺らぎ応答理論)が提唱されている。しかしながら、未だ実験的な検証は十分ではなく、またこの理論を用いて進化しやすさや方向性を予測することはできていない。そこで我々は、これまでに開発した生物と同じように変異と自然選択により自律的に進化する分子システム(RNAの自己複製システム)を用い揺らぎ応答理論の検証を行う。本プロジェクトでは、【項目1.進化が進むにつれて揺らぎが小さくなるか】、および【項目2.揺らぎの大きさから進化しやすさ(有益変異の多さ)が予想できるか】を実施する。2020年度には項目1について、進化途中のすべてのRNA(64種類)について構造解析を行った。その結果、あとの方で出現したRNAほど構造揺らぎが小さくなっている傾向を見出した。ただしそれだけではなく、2回ほど構造揺らぎが急に大きくなる現象を起こしていることも見出した。さらに項目2については、構造揺らぎの大きさが異なる複数のRNAについて、構造揺らぎが大きいRNAほど進化しやすいか(=有益変異が多く存在するのか)を検証した。進化途中で現れた4種類のRNAについて、点変異ライブラリー構築し、そこから短期間の進化実験を行い、次世代シーケンスで各変異の頻度を計測することにより有益変異の頻度を求めた。その結果、揺らぎが大きいほど、有益変異の存在頻度が高いことを示す証拠を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りの実験を実施することができたため。
本年度見出した揺らぎの大きさと適応変異頻度の相関について、因果関係があるかどうかを検証するために、わざと揺らぎを変えたRNAを用意し、その適応頻度を測定する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
ACS Synthetic Biology
巻: 9 ページ: 1771-1780
10.1021/acssynbio.0c00137
eLIFE
巻: 9 ページ: e56038
10.7554/eLife.56038