研究領域 | 進化の制約と方向性 ~微生物から多細胞生物までを貫く表現型進化原理の解明~ |
研究課題/領域番号 |
20H04865
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石川 由希 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (70722940)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 配偶者選好性 |
研究実績の概要 |
配偶者選好性の分化は種分化において重要である。種内レベルの配偶者選好性の揺らぎから、どのように種間で分化した選好性が生じるのかは、生物の進化を理解する上で重要な命題である。本研究では、ごく近縁でありながら単一フェロモンへの選好性を逆転させた姉妹群であるキイロショウジョウバエ(キイロ)とオナジショウジョウバエ(オナジ)、またオナジと同様のフェロモン選好性を示すこれら2種のF1雑種オスを用いてこの問いに答える。 前年度までの公募研究において、私たちはフェロモン選好性を司る神経ネットワーク(フェロモン選好ネットワーク)の機能をキイロと雑種で比較し、雑種ではフェロモン選好性が正から負に逆転していることを示した。さらにGFP再構成(GRASP)法を用いて、フェロモン選好ネットワークの特定の神経接続が失われている可能性を見出した。このことは、フェロモン選好ネットワークの進化保存性は神経接続ごとにそれぞれ異なっていることを示唆している。 そこで本年度は、この神経ネットワークの接続の進化保存性と、神経接続の揺らぎやすさが相関するかを検証するため、外的/内的摂動を与えたハエの神経接続の強度を定量し、各経路でばらつきを比較する定量解析系を立ち上げた。次に、雑種で見られた神経接続の喪失がオナジにも見られるかを検証するために、GFP再構成法の遺伝学的ツールをオナジに導入した。まず①該当ニューロンを標識することが知られるゲノム領域と相同な位置にattP配列を導入し、②その後phiC31システムを用いてattP配列にLexA配列を導入するという2段階のアプローチで行うこととし、本年度は①のattP配列が導入したハエが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は神経接続の進化保存性と揺らぎやすさを検証するための定量解析法の確立に成功し、またオナジにおける検証のためのGRASPツール導入に向けた第1段階であるattP配列の導入も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度立ち上げた定量解析法を用いて、神経接続の進化保存性と揺らぎやすさの検証を行う。また、オナジにおける検証を行うため、attP配列を導入した系統において目的ニューロンが正しく標識されているのかを確認し、その後phiC31システムを用いてLexA配列を導入し、オナジのGRASPツール系統を確立する。系統が確立できたら、F1雑種で喪失していた神経接続がオナジでも失われているのかを検討する。
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