生体は自身の遺伝子を使い環境の変化に対応しつつ生命活動を維持している。短期間の環境変動-環境ストレスには自身の遺伝子セットを使って細胞内環境を適応させるが、長期にわたるシビアな環境ストレスが継続すると、遺伝子構造を変化させて(進化して)適応することもある。しかし、どのような遺伝子がこの進化適応を起こしやすいのか/起こしにくいのかはほとんど分かっていない。
本研究は出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を真核細胞のモデルとして、発現量揺らぎ-適応系(ADOPT:Autonomous Dosage Optimization using Plasmid with Two-micron origine)を独自に開発し、出芽酵母の持つ6000の遺伝子の発現量を自由に変化させられるシステムを構築し、どのような性質をもつ遺伝子の発現変動が進化適応に寄与するのかを調査することを目的とした。特に、強いストレス環境下で適応的に働く遺伝子の同定を主たる目的とした。
これまでの4年間の研究によりADOPT系が完成し、最大1ヶ月以内に100検体以上を調査可能なハイスループットな実験系にすることができた。多数のストレス環境において発現量変動が適応的に働く遺伝子(GOFA:Gene whose Overexpression is Functionally Adaptive)を取得したところ、これらの多くは細胞の根幹的機能に関わるものではなく環境との相互作用に関わる遺伝子群であった。またGOFAの機能はストレスに対応するのに必要ではあり自然界では存在するが、実験室環境では欠損している要素と強く関連することがわかった。
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