公募研究
植物幹細胞が性質の異なる2つの娘細胞になる過程は、不等分裂または非対称分裂と呼ばれ、その分子機構の研究は限られたモデル被子植物で行われてきたものの、知識は断片的でありその大部分はまだよくわかっていない。そこで本研究ではこれまでの成果を発展させ本領域の推進に役立てるため、ヒメツリガネゴケの原糸体頂端幹細胞に着目し、その幹細胞をin vivoの生きた状態で1細胞単位で研究し、植物に特有の分子制御機構を複数明らかにすることを目的とし実施した 。ヒメツリガネゴケの原糸体は幹細胞が露出しており、このような目的に向いた材料である。また全ゲノム情報が利用でき、遺伝子の機能解析技術も蓄積している。このような材料の利点を生かし、植物幹細胞に特有の特徴を明らかにするために相互に関連の深い次の3つの研究課題に取り組んだ。《1》植物幹細胞の極性・不等分裂の制御機構、《2》植物幹細胞の不等分裂と等分裂を可逆的に制御する機構、《3》植物幹細胞の原形質連絡の制御機構に関する研究をそれぞれ実施した。その結果、植物特有の転写因子が水チャネルを形成するアクアポリンの発現を誘導し、また並行して液胞形成の局在や形態などを同時に制御していることがわかった。またこの転写因子は細胞壁の構築にも関わり、幹細胞の極性形成制御に重要であると考えられた。次に植物特有のアラビノガラクタンタンパク質に着目し研究を進めた。その結果、この因子はオーキシンの感受性の制御に関わり、オーキシンシグナル伝達系の転写因子を介して細胞壁成分の調整に重要な役割を担っていることがわかってきた。またアブシジン酸シグナル伝達因子の2つに着目し原形質連絡制御の関係を調べ、この両者で働きが違うことを明らかにした。またアブシジン酸により可逆的に新しいストレス耐性の幹細胞の生成が制御されていることを見出した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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