研究実績の概要 |
・栄養成長期の腋芽幹細胞の維持機構 最近私たちは、イネの TAB1-FON2 経路が、腋芽メリステム形成過程の幹細胞維持を担っていることを明らかにした(Tanaka et al., 2015; Tanaka and Hirano, 2020)。本研究では、TAB1-FON2 経路に関する新たな知見を得ることを目的とし、花メリステム維持の負の制御因子として知られている FON1 に着目し分子遺伝学的な解析を実施した。 まず、fon1 変異の tab1 に対する影響を調べるために、fon1 tab1 二重変異体の表現型を解析した。その結果、fon2 tab1 二重変異体とは異なり、fon1 tab1 二重変異体では tab1 の分げつ形成不全は抑圧されず、野生型様の腋芽も観察されなかった。次に、fon1 単独変異体の表現型を解析した結果、分げつ数も腋芽の形態も、野生型同様であることが判明した。これら fon1 の表現型は、fon2 の表現型と対照的であることから、FON1 は腋芽形成に関与していないことが示唆された。腋芽形成過程における FON1 の発現パターンを解析したが発現は全く検出されず、この結果も上記の考えと一致している。本成果を、Cytologia 誌に発表した(Tanaka and Hirano, 2021)。 ・生殖成長期の花幹細胞の維持機構 栄養成長期の腋芽幹細胞の維持に必須な TAB1 遺伝子の突然変異体は、腋芽形成に加えて花にも多面的な異常を示したため、その花の表現型に着目して解析を実施した。tab1 変異体の花器官数は野生型とほぼ同様であったことから、イネの花幹細胞の維持は、シロイヌナズナと比較して複雑な機構によって制御されている可能性が示唆された。
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