器官の再生効率は植物種によって大きく異なり、組織培養系で茎葉再生がうまくいかない場合は多い。何らかの内的要因がカルスからの幹細胞新生を制限していると考えられるが、その手がかりは得られていなかった。私はこれまでに分子遺伝学的研究を進め、幹細胞新生を抑制するホメオボックス型転写因子を発見していた。本年度は、当該の転写因子の機能欠損体および誘導的過剰発現体を用いた解析を進め、シュート再生を制限する機構について明らかにした。まず、機能欠損体においてはWUS など複数の幹細胞形成に重要な遺伝子の発現が上昇しており、反対に誘導的過剰発現体では発現誘導後24時間以内に顕著な発現低下が認められたことから、本転写因子は幹細胞形成に重要な遺伝子群の発現を抑制する機能を持つことがわかった。さらに遺伝学的な解析からも、WUS が下流にあることが明らかになった。また、本転写因子は器官再生において重要な役割を果たすオーキシンによって発現誘導されることを見出しており、再生応答の鍵を握る因子軍の関係解明を進めることができた。
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