公募研究
我々はエンドソーム・ライソソームが低分子量G蛋白質により異なるゾーンを形成していることを観察してきた。Arl8bが存在しTLR7の活性化に関与するライソソームのゾーンは、インフルエンザの感染に応答し1型インターフェロンの産生に関わり、全身性エリテマトーデスの発症にも関与することを我々は解明した。更に主要組織適合性抗原(MHC)Class IIが存在し、MHC class IIを介した抗原提示にArl8bゾーンが関わることが明らかになった。Arl8bのゾーンとは異なりRab7aが存在する小胞ゾーンにはTLR3が存在し、単純ヘルペスウイルス1型に応答する為に機能することも明らかにした。そのRab7aゾーンは免疫反応にどのような役割を果たしているかを明らかにするために樹状細胞特異的にRab7aを欠損させた。すると2型自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎を発症してマウスは死亡した。Rab7aを欠損した樹状細胞のMHC class Iは、エンドサイトーシスされてライソソームに移行する過程が停滞することで、MHC class Iの分解が遅れ、細胞表面上のMHC class Iの発現が増加する。そしてそのことによりCD8T細胞へのクロスプレゼンテーションが増強することが解明された。更に電子顕微鏡による解析から粗面小胞体の顕著な減少とマイトファジーも観察されている。樹状細胞に蛍光色素をラベルした抗原を投与すると、抗原が存在する小胞の周りを囲むライソソームが観察されている。その後抗原が存在する小胞はMHC class Iが存在する小胞を包み込み最終的には1つの小胞になるように観察された。これは時間経過を追っただけのものであり動画観察でより詳細に解明される。さらにエンドソーム・ライソソームはTLR3とTLR7とTLR9が異なる小胞に存在し機能的に分かれていることが解明されつつある。
3: やや遅れている
我々はエンドソーム・ライソソームの応答ゾーンについて研究を行っている。その中で低分子量G蛋白質のArl8bゾーンがインフルエンザウイルスに対する応答や全身性エリテマトーデスの発症に関与しており、主要組織適合性抗原(MHC)Class IIが存在し、MHC class IIを介した抗原提示を調節していることを明らかにした。本研究ではRab7aによって形成される応答ゾーンに注目し、樹状細胞特異的にRab7aを欠損させたところ2型自己免疫性肝炎だけでなく原発性胆汁性胆管炎を発症してマウスは死亡したことから、Rab7aの応答ゾーンのメカニズムを検討した。MHC class Iは正常な樹状細胞では細胞表面からすぐにエンドサイトーシスされてライソソームで分解されるが、Rab7a欠損樹状細胞ではライソソームまでの移行に問題が起こり、MHC class Iの分解が抑制されることを明らかにした。そしてそのことによりMHC class Iの細胞表面での発現が上昇してCD8T細胞へのクロスプレゼンテーションが亢進することで2型自己免疫性肝炎が発症することが明らかになった。更に、樹状細胞を電子顕微鏡で観察するとRab7a欠損樹状細胞では粗面小胞体の顕著な減少とマイトファジーが認められた。mTorC1の下流のシグナル伝達に異常が認められることも明らかになりつつあり、Rab7a欠損樹状細胞でオートファジーが亢進していると思われる。加えて蛍光色素でラベルした抗原を加えると、抗原が存在する小胞をライソソームが取り囲むように存在し、オートファジーが推測された。今後これがオートファジーかを解析するとともに、オートファジーによる抗原の分解がクロスプレゼンテーションに関与するのか検討する。また、分解された抗原が存在する小胞は、MHC class Iが存在する小胞を包み込むようにしていることが観察された。
前年度までの観察から、樹状細胞特異的にRab7aを欠損させると2型自己免疫性肝炎と原発性胆汁性胆管炎を発症することが明らかになった。この結果は樹状細胞におけるRab7aゾーンの機能は免疫制御に重要な役割を果たしていることを示唆した。その1つの機能はMHC class Iのエンドサイトーシス後のライソソームへの移行に関与し、MHC class Iの分解を制御していることであった。そしてもう一つの機能に関して今後研究を進める。Rab7a欠損樹状細胞は粗面小胞体が顕著に減少して、オルガネラの量も少なくスカスカな状態であった。マイトファジーも高頻度で観察された。Rab5欠損細胞で認められたジャイアント初期エンドソームも観察されて、細胞内のオルガネラの異常は様々に起こっていた。今後電子顕微鏡による詳細な解析を進めるとともに、超解像顕微鏡を用いてオルガネラマーカーを染色し詳しく解析を行う。さらにmTorC1の活性化に関しては下流のシグナル伝達に問題があるように認められ、今後mTorC1が活性化してもRab7aが存在しないとmTorC1の下流のシグナル伝達分子と出会えない可能性を検討して研究を行う。加えて、樹状細胞に特異的な機能であるCD8 T細胞へのクロスプレゼンテーションに注目する。蛍光色素でラベルした抗原を樹状細胞に加えると、抗原が存在する大きな小胞の周りにライソソームが取り囲むように存在することが確認された。この現象がオートファジーなのかを明らかにし、オートファジーがクロスプレゼンテーションに関与するのかを明らかにするとともに、Rab7a欠損樹状細胞はオートファジーが亢進することで、クロスプレゼンテーションが増強していることを解明する。更に抗原が存在する小胞はMHC class Iが存在する小胞を包み込んでいることが観察されており、今後動画観察などで詳細に機構を解明する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (2件)
International Immunology
巻: 32 ページ: 785-798
10.1093/intimm/dxaa055.
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/publication/annualreport/list.html
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/kanseniden/