様々な繊毛病で見られる突然変異に関して、これらの変異によってどのようなタンパク質間相互作用が異常になるのかを明らかにし、繊毛タンパク質がトランジションゾーン(TZ)を通過する機構がどのように異常になるのかを解明することによって、繊毛病発症の分子基盤に迫った。 ① 繊毛膜に局在するホスホイノシチド5-ホスファターゼであるINPP5Eが、低分子量GTPaseのARL13BとARL3の調節下で、どのようにしてTZを超えて繊毛膜に局在するようになり、繊毛膜に保持されるのかのメカニズムを明らかにした。 ② 骨格形成異常を伴う繊毛病に関連して、繊毛内逆行輸送を媒介するIFT-A複合体のサブユニットIFT144、および繊毛内逆行輸送のモーターであるダイニン2複合体のサブユニットDYNC2LI1の変異に起因する繊毛病の分子レベル、および細胞レベルでの基盤を明らかにした。特に、これらの変異によって、IFT装置がTZを超えて繊毛から排出されなくなることを示した。 ③ 網膜変性、多指症、嚢胞腎、病的肥満などを伴う繊毛病であるバルデー・ビードル症候群(BBS)に関連して、繊毛内順行輸送を媒介するIFT-B複合体のサブユニットであるIFT27/BBS19およびIFT74/BBS22の変異に起因する分子レベル、および細胞レベルでの異常の基盤を明らかにした。特に、BBSに見られる変異によって、繊毛に局在するGPCRのTZを超える繊毛からの排出が障害されることを証明した。 ④ 繊毛先端でのIFT装置の順行輸送から逆行輸送への方向転換を調節するキナーゼICK/CILK1がIFT-B複合体に結合して先端へと運ばれるメカニズムを明らかにするとともに、ICK/CILK1をリン酸化することによって方向転換に関わる別のキナーゼCCRK/CDK20による方向転換の調節機構も明らかにした。
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