公募研究
一般的に、糖タンパク質は小胞体やゴルジ体のオルガネラにおいて糖鎖で修飾され、適切な場所に運ばれ機能するとよく知られているが、その詳細な分子機序は必ずしも明らかになっていない。これまでに我々は細胞接着分子の受容体であるインテグリンα5β1に付加された糖鎖構造や付加サイトが細胞遊走・増殖などの機能を異なって制御することを明らかにした。このように糖鎖は膜受容体の機能の変化だけではなく、細胞内膜系における挙動にも関係していることを見出した。興味深いことに、シアリル化などが起こらないGnT-I欠損細胞ではα3β1の局在が細胞-ECM間より細胞-細胞間で増加することを見いだしている。そのシアリル化は、TGNに多く存在するPI4キナーゼIIαによって制御されている。また、我々は、α2,3シアリル化を触媒する三つの酵素(ST3Gal3、ST3Gal4とST3Gal6)を欠失させることで、その三つの酵素は、それぞれのprotein X、インテグリンβ1とEGFRを特異的に修飾することを明らかにした。一方、FLT3 (Fms-like tyrosine kinase3)も糖タンパク質であり、受容体型type IIIチロシンキナーゼの一種である。急性骨髄性白血病(AML)患者の約30%はFLT3遺伝子に変異を持っており、FLT3は造血において重要なシグナル分子として機能している。私達はコアフコシル化による野生型FLT3の活性化や細胞内シグナリングの制御に関わることや、変異型FLT3のER局在との関連性を見出した。現在、糖鎖の非還元末端のシアリル化によるインテグリンなど膜受容体の局在や機能制御と、コアフコシル化によるFLT3変異体のGolgiからER逆行輸送への影響を注目し、糖鎖修飾による膜受容体の選別輸送ゾーンの特異性とその制御機構を解析している。
2: おおむね順調に進展している
α2,3とα2,6シアリル化標的分子を同定するため、様々な糖鎖変異体やアッセイ系を構築した。またN-型糖鎖の変異細胞株を樹立し、糖鎖によるFLT3受容体の輸送への影響を解析できるようになった。基本的には研究計画の通りに概ね順調に進展しているが、他の研究機関との共同研究に関しては、 Covid-19感染拡大防止措置を施しているため、やや遅れている。
糖鎖修飾による膜受容体の選別輸送ゾーンの特異性とその制御機構の解明を目指すため、次年度は以下の計画を行う。1)それぞれシアル酸によるα2,3とα2,6シアリル化標的分子を同定し、シアリル化によるインテグリンなど膜受容体の局在や機能制御を調べる。2)コアフコシル化の有無や複合型N-glycan付加によるFLT3変異体のGolgiからER逆行輸送への影響とその制御機構を解析する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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