研究実績の概要 |
糖タンパク質は小胞体やゴルジ体のオルガネラにおいて糖鎖で修飾され、適切な場所に運ばれ機能するとよく知られているが、その詳細な分子機序は必ずしも明らかになっていない。その大きな一因は、糖タンパク質ごとに付加されている糖鎖、または付加部位ごとの糖鎖構造の違いによるものと考えられる。これまでに、私達は、N-型糖鎖に主に働く三つのα2,3シアル酸転移酵素(ST3Gal3、ST3Gal4とST3Gal6)は、それぞれ異なる膜受容体を特異的に修飾することを明らかにした。即ち、インテグリンβ1のα2,3シアリル化はST3GAL4、EGFRのα2,3シアリル化はST3GAL6によって修飾されることが判明された 。また、トランスゴルジネットワーク(TGN)に多く存在するPI4KIIαはβ1と共局在し特異的に相互作用することよってシアリル化が増加するとの新規なシアリル化制御機構を発見した。最近、我々は、インテグリンのシグナルを司る細胞内Focal adhesion kinase(FAK)がN-型糖鎖のシアリル化と深く関わることを見出した。FAKのノックアウト(FAK-KO)細胞ではシアリル化が低下するが、FAK-KO細胞にFAK遺伝子を導入するとシアリル化が上昇した。現在、PI4KIIαの機能発現や、GOLPH3とシアル酸転移酵素間の複合体形成におけるFAKの役割を調べている。一方、メディアルゴルジ体に存在するGnT-IVがUDP-GlcNAc輸送体SLC35A3と選択的に相互作用し、β1,4 GlcNAc分岐型N-型糖鎖を制御する新たな分子機序を見出した。今後、糖転移酵素による標的分子修飾の特異性とその仕組み、および膜受容体選別輸送ゾーンの特異性とその制御機構の解明を目指す。
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