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2020 年度 実績報告書

ミトコンドリア内における自然免疫応答ゾーンの探索的研究

公募研究

研究領域細胞機能を司るオルガネラ・ゾーンの解読
研究課題/領域番号 20H04914
研究機関福岡大学

研究代表者

小柴 琢己  福岡大学, 理学部, 教授 (70403970)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワードミトコンドリア / RNAウイルス / 自然免疫 / miRNA / MAVS
研究実績の概要

本研究は、本研究領域が目指す「ストレスに対してオルガネラ内に形成される機能領域の理解」の命題に対し、感染微生物(ストレス)とミトコンドリア(オルガネラ)をキーワードとして、自然免疫時に形成される応答ゾーンの発掘を目指す課題である。該当年度は、ミトコンドリアを介した抗ウイルス自然免疫において、宿主内のマイクロRNA(miRNA)の機能的役割に着目した研究を行った。

これまでの先行研究から、miRNAは細胞内で多数の標的遺伝子の発現を制御することが分かっており、その結果、様々な細胞機能の調節に関与している。さらに、そのうちの多くのmiRNAに関しては、疾患との関連が明らかになっており、今後の創薬ターゲットとしても注目されている。本研究では、以下のような方法を用いて、ミトコンドリアを介した抗ウイルス応答に影響するmiRNAの網羅的な探索を試みた。ヒト由来の培養細胞(HEK293)に、センダイウイルス感染又は二本鎖RNAアナログ(poly I:C)を人為的に導入することで細胞を刺激し、その後の細胞内におけるmiRNA発現変動を解析した。その結果、二種類のmiRNA (miR-302b及びmiR-372)が、RNAウイルスの感染後期に発現が上昇し、I型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生を抑制することを確認した。また、これらmiRNAは、ミトコンドリアの形態にも影響し、その発現と共にミトコンドリアの分裂を亢進することを見出した。そこで、これらmiRNAの標的遺伝子をマイクロアレイ解析により調べたところ、miR-302b及びmiR-372は複数のミトコンドリア局在分子の遺伝子発現を調節していた。その中には、ミトコンドリア分裂に関わる分子群や代謝経路に関わる因子が多く含まれることまでを明らかにできた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画では、抗ウイルス応答に影響するmiRNAの網羅的な探索を約半年以上かけて見つける予定をしていたが、実験が順調に進み、大幅にその時間を短縮することが出来た。その結果、抗ウイルス応答に影響するmiRNAを約10種類程度発見し、特にミトコンドリア機能に直接作用する因子を二つ同定することに成功した。現在では、他の探索因子も含めて、ミトコンドリアを中心とした自然免疫時に形成される応答ゾーンの発掘を目指す。

今後の研究の推進方策

該当年度は、ミトコンドリア・ゾーンの中で、その連携に影響を及ぼす機能性因子(核酸)の網羅的な探索を中心に進めた。今後の研究では、これらが標的とするmRNAやタンパク質間の相互作用ネットワークに関する相関解析を行い、その相関が自然免疫とどのように結びつくのかを明らかにしていきたい。特に、その作用機序に関する詳細を明らかにしたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] The microRNAs miR-302b and miR-372 regulate mitochondrial metabolism via the SLC25A12 transporter, which controls MAVS-mediated antiviral innate immunity2020

    • 著者名/発表者名
      Yasukawa Kai、Kinoshita Daisuke、Yaku Keisuke、Nakagawa Takashi、Koshiba Takumi
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 295 ページ: 444~457

    • DOI

      10.1074/jbc.RA119.010511

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Influenza Virus-Induced Oxidized DNA Activates Inflammasomes2020

    • 著者名/発表者名
      Moriyama Miyu、Nagai Minami、Maruzuru Yuhei、Koshiba Takumi、Kawaguchi Yasushi、Ichinohe Takeshi
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 23 ページ: 101270

    • DOI

      10.1016/j.isci.2020.101270

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] MAVS is energized by Mff which senses mitochondrial metabolism via AMPK for acute antiviral immunity2020

    • 著者名/発表者名
      Hanada Yuki、Ishihara Naotada、Wang Lixiang、Otera Hidenori、Ishihara Takaya、Koshiba Takumi、Mihara Katsuyoshi、Ogawa Yoshihiro、Nomura Masatoshi
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 11 ページ: 5711

    • DOI

      10.1038/s41467-020-19287-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mitochondria: In the Cross Fire of SARS-CoV-2 and Immunity2020

    • 著者名/発表者名
      Burtscher Johannes、Cappellano Giuseppe、Omori Akiko、Koshiba Takumi、Millet Gregoire P.
    • 雑誌名

      iScience

      巻: 23 ページ: 101631

    • DOI

      10.1016/j.isci.2020.101631

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 抗ウイルス自然免疫におけるミトコンドリアの応答ゾーン2020

    • 著者名/発表者名
      錦織充広、小柴琢己
    • 雑誌名

      福岡医学雑誌

      巻: 111 ページ: 77~85

    • 査読あり
  • [学会発表] miRNAを介したミトコンドリアの機能制御2020

    • 著者名/発表者名
      小柴琢己
    • 学会等名
      第93回 日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [備考] 小柴研究室

    • URL

      http://www.sci.fukuoka-u.ac.jp/lab/chem/koshiba/

  • [備考] 福岡大学研究者情報

    • URL

      https://resweb2.jhk.adm.fukuoka-u.ac.jp/FukuokaUnivHtml/info/7556/R108J.html

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公開日: 2021-12-27  

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