今後の研究の推進方策 |
(1) 2021年度はメダカ視蓋を解剖摘出して1細胞レベルで分離して、6,000-12,000細胞を回収してシングルセルトランスクリプトーム法を行う。これにより1細胞当たり平均で22,500リード/cell, 1,300遺伝子/cellを同定する予定である。これによりオキシトシン受容体発現ニューロンにおいて遺伝子発現に性差がある遺伝子を検索する。 (2) Tet-ONシステムを用いてオキシトシン遺伝子の発現の時期と量を人工的に制御できる遺伝子改変メダカを作成する。これによりオキシトシン遺伝子発現量依存に配偶者戦略の性スペクトラムが生まれるか検討する。これと併行して、最初期遺伝子座に rtTA を導入したノックイン系統 (IEG:rtTA系統)と、TREプロモーター依存に蛍光タンパク質が発現する系統(TRE:GFP系統)の両系統を掛け合わせた系統を作成し、薬剤添加条件下で行動実験をすることでオキシトシン変異体と野生型の配偶行動における神経活性化パターン(視覚情報処理過程)の違いを検索する。脊椎動物ではオキシトシン受容体は社会認知に関わる脳部位に発現しており、嗅覚情報を介して同種認知する齧歯類ではオキシトシン受容体は一次嗅覚中枢で働いて、社会シグナルに対する感度にバイアスを与える働きがある。本研究では、メダカ視蓋では、オキシトシンが視覚的な社会シグナル(異性を見分ける能力)にバイアスを与える役割を性特異的に担う可能性を検討する。
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