研究実績の概要 |
メダカにおいてはオキシトシンシステムは配偶戦略の性差が発現するために必須のシステムであり(Yokoi et al 2020 PNAS)、オキシトシンシステムの標的ニューロンの性差を解明すれば、配偶戦略の性差を生み出す分子神経基盤を解明できる可能性がある。本研究ではオキシトシンシステムの標的ニューロン(oxtr1 発現ニューロン)に性差があることを検証することを目的として、 oxtr1 発現ニューロンが存在する終脳/視さく前野と視蓋において scRNA-seq(シングルセルトランスクリプトーム)を行なった。研究開始当初、魚類ではゼブラフィッシュ稚魚でscRNA-seqが実施されているが (Nat Biotechnol 2018) 、成魚脳でscRNA-seqを実施された例がなかった。そこで、本研究ではまずメダカ成体脳を用いて、scRNA-seqの実験系構築を行った。メダカ終脳と視蓋を用いて細胞分離条件の検討を行い、最終的に、メダカ終脳メスから 4,786 細胞を回収し、 1 細胞あたり、 79,738 リード/cell、1,040 遺伝子/cell, 2,198UMI/cell のデータを取得できた。過去のゼブラフィッシュ幼魚の全脳 を用いた報告と比較して、メダカ成魚脳でscRNA-seqの実験系の確立に成功したと判断した。また終脳はクラスタリング解析から 14 種類に分類できることがわかり、oxtr1 発現ニューロンを含む細胞腫を同定した。次に、終脳/視さく前野と視蓋を対象にオスとメスのシングルセルトランスクリプトームを実施した。それぞれの組織から分離した細胞を 10X Genomics Chromium により、分取、バーコーディング、ライブラリー作製することに成功したが、現在、次世代シークエンサーを用いてシーケンスを実施中である。
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