我々は以前、オスマウスの超音波発声(USV)発声がテストステロンの組織的効果に依存し、スペクトラム型であることを報告した。具体的にはプロピオン酸テストステロン(TP)を投与したオスとメスでは、対照のオスとメスに比べて、USVの頻度が高くなった。USVを9つのタイプに分類した場合も、雄雌で際立った差はなかったが、TPは高周波数のUSVを増加させ、低周波数で短時間のUSVを減少させた。また、USVの種類別の遷移解析では、TP処理したオスとメスは、それぞれ通常のオス、メスと同様の遷移パターンを示した。このことは、USVのスペクトラムには、テストステロン非依存的な性差があることを示唆した。 次にマウスの集団生活場面におけるUSVの変化とテストステロンの変化を解析した。社会的な順位形成後には、1)ランクが上がるとシラブルの曲点の数が低下、2)ランクの変動と体重、テストステロンの変動、USVの発声回数の変動は相関なし、3)テストステロンが上昇すると周波数変動が上昇、4)テストステロンが上昇すると、周波数直線性が上昇の結果が得られた。このことからこれまでの仮説を異なり、ランクとUSV、テストステロンとUSVの関係はそれぞれ認められるが連動しないことが示された。これはUSVの構造内にはテストステロン依存性成分と、ランク依存性成分が混在していることを意味する。 最後に、集団で生活する際、順位を人為的に操作し、USVの特徴量の変化を調べた。視床下部のVMHにDreaddsを導入することで、順位をかき乱すことに成功した。また、ランクの変動に伴うテストステロンの変動は認められず、テストステロンはある程度、一貫した値を保つことが示された。社会ランクとテストステロン、USVのスペクトラムに関しては一部関連するものの、直接的な関与が否定された。
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