研究実績の概要 |
哺乳類の雌雄(男女)は一見して容姿で見分けられるほど様々な部位で異なる表現型(性スペクトラム)を示すが、Y 染色体上の遺伝子はどのように性スペクトラムへ影響するのだろうか?申請者はこれまでのマウスを用いた研究から、Y 染色体上遺伝子のノックアウト(KO)によって形態的な性スペクトラム表現型(体重・体長・BMI)が変動しうることを見出してきた。本研究では、これまでの解析をさらに発展させ、詳細かつ高解像度な形態解析を実施するとともに、性差のある全身の様々な表現型パラメーターを包括的に統合しつつ一次元・二次元で表記する統計手法を完成させ、性スペクトラムの代表的な表現型として「ボディバランスとY 染色体上遺伝子」との関連を明らかにする。 まず、Y 染色体上の遺伝子のうち7 遺伝子(Usp9y, Ube1y1, Sry, Uty, Zfy1, Zfy2, Rbm31y)が既にノックアウトすると少なくとも体長・体重・BMI などのボディバランスに影響があることが分かっている。こうして絞り込んだ7 遺伝子について、それぞれ3 つのsgRNA を合成しCas9 mRNA とともにC57BL/6J 系統の受精卵に注入しノックアウト胚およびマウスを作製した。現在その表現型の評価系としてMicro-CT によって全身のボディバランスを解析している。さらに、これまでのパイプライン解析から得た多様な性差を示す表現型パラメーターを抽出しており、そのデータを重みづけしつつ統合・圧縮する手法を開発した。この手法により、各遺伝子のノックアウトが性スペクトラムに与える影響を器官レベル・個体レベルで表記することが可能になった。この手法をボディバランスに着目したパラメーターにも適応することで、ボディバランスの性スペクトラムを個体レベルで定量的に表記することが可能になった。
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