研究領域 | 性スペクトラム - 連続する表現型としての雌雄 |
研究課題/領域番号 |
20H04936
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
二橋 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (50549889)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トンボ / 性分化 / メス多型 / オス多型 |
研究実績の概要 |
トンボは基本的に視覚で相手を認識するため、雌雄で翅や腹部の色彩・斑紋が著しく異なる種が多い。興味深いことに、幅広いトンボでオスに擬態するメス(オス型メス)や、逆にメスに擬態するオス(メス型オス)が出現する。この現象は、生態学的な面から研究が進められてきたが、多型や性分化に関する分子基盤はほとんど未解明である。本研究では、トンボ複数種のメス多型、オス多型に着目しながら、①オスとメスの見た目の性差に関与する分子基盤、および②性分化に関わる体色多型の原因遺伝子、を解明することを目的とする。 2020年度は、さまざまなトンボで遺伝子機能解析系の条件検討を行い、効率的にRNAiを行うステージの検討を行った。その結果、各種トンボに共通して終齢幼虫は外部形態を指標に3つのステージに区別することが可能で、終齢幼虫の最初のステージまでにRNAiを行うと、成虫の体色に関する表現型を高効率で確認できることを見出した。また、アジアイトトンボとアオモンイトトンボを用いて、昆虫の性分化に関わる遺伝子や体色関連遺伝子の機能解析を行い、体色のオス化とメス化に重要な遺伝子を見出すことに成功した。さらに、メス多型のあるチョウトンボとコフキトンボに関して、これまでに得ているゲノムのアセンブリをRNAseqのデータを基に改訂するとともに、strand-specificなRNAseq解析を網羅的に行い、予測遺伝子の整理を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トンボにおいて機能解析法を効率よく行う手法の確立に成功し、アジアイトトンボとアオモンイトトンボを用いて性分化関連遺伝子の機能解析を一通り行うことに成功するなど、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、昨年度に引き続き、以下の10 種について、体色に差のある組織ごとにRNAseq による網羅的な発現解析(それぞれの型について、n = 4 ずつ)を行う。アオイトトンボ(体表のUV 反射に多型)、ニホンカワトンボおよびアサヒナカワトンボ(翅色および体表のUV 反射に多型)、オゼイトトンボおよびオオイトトンボ(体斑(青色もしくは緑色)に多型)、オオルリボシヤンマおよびギンヤンマ(体斑(青色もしくは緑色)に多型)、コフキトンボ(翅色および体表のUV 反射に多型)、マユタテアカネ(翅斑および腹部の体色(赤色もしくは黄色)に多型)、マイコアカネ(腹部の体色(赤色もしくは黄色)に多型)。発現に有意差のある遺伝子が絞り込まれた場合は、RNAi によって遺伝子機能解析を行い、多型の原因遺伝子の可能性がある場合は、比較ゲノム解析、RAD-seq による連鎖解析を行う。
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