研究実績の概要 |
急性腎障害モデルでは、Mincle発現が持続的に上昇し、腎虚血再灌流による尿細管障害・壊死と炎症細胞浸潤(急性期)、炎症の収束と尿細管の再生(修復期)、組織再構築(慢性期)の経過を辿る。Mincle欠損マウスは、急性期の障害は野生型マウスと同程度に認めるが、修復期に速やかに炎症が収束し、腎萎縮が軽減することを見出している。本年度は、以下の項目に取り組んだ。 1)Mincle発現マクロファージの単離・同定;Mincle発現マクロファージを単離するためにセルソーターを用いたが、腎臓から細胞を分散するために用いるコラゲナーゼ処理によりMincleが切断されることに気付いた。そこで、コラゲナーゼ処理を行わず、物理的に細胞を分散する手法を用いて、Mincle発現細胞を分取することに成功した。Mincle発現細胞は、従来のM1, M2マクロファージとは異なるユニークな遺伝子発現プロフィールを示すことを見出した。 2)Mincleシグナルの検討;従来、結核菌の細胞壁を構成するTDM(Trehalose-6,6-dimycolate)を用いて、MincleシグナルやMincleの作用が検討されてきた。そこで、内因性リガンドのβ-グルコシルセラミド+遊離コレステロールを用いて同様の検討を行った。炎症性サイトカイン産生に関してはTDMと同様であったが、貪食抑制に関しては、Mincle依存性と非依存性の作用があることを見出した。 3)包括的1細胞遺伝子発現解析;本領域のサポートを得て、肥満の脂肪組織を対象とする包括的1細胞遺伝子発現解析の予備検討を開始した。まず野生型マウスに高脂肪食を負荷し、経時的にサンプリングを行って、1細胞遺伝子発現解析に供した。得られたデータをフローサイトメーターの解析結果と比較し、脂肪組織の間質細胞を適切に解析できていることを確認した。
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