研究領域 | 予防を科学する炎症細胞社会学 |
研究課題/領域番号 |
20H04948
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 政克 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00311605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 喘息 / Bach2 / 肺胞蛋白症 / Th2 / Treg / Gfi1 |
研究実績の概要 |
転写制御因子Bach2のT細胞特異的欠損(KO)マウスでは、喘息-COPDオーバーラップシンドローム(ACOS)様の病態が自然発症することを報告している。また、Bach2 KOマウスの肺ではIL-33受容体(R)陽性Th2細胞が増加することを見出している。令和2年度は、Bach2 KOマウスにおけるIL-33R陽性CD4 T細胞の分化について検討し、メバロン酸合成経路の活性化が重要である可能性を明らかにした。さらに、IL-33R陽性CD4 T細胞の分化には転写抑制因子Gfi1が重要な役割を担っており、Gfi1はTh2細胞において代謝調節を介して、IL-33R陽性CD4 T細胞の機能・分化を調節していることを見出した。また、Bach2は、IL-4とCD25の発現誘導を介して、Gfi1の発現を正に制御していた。 それに加えて、T細胞特異的Bach2トランスジェニック(TG)マウスの解析を行なった。その結果、Bach2 TGマウスでは、肺胞蛋白症様の病態が自然発症し、生後半年前後でほぼ全てのTGマウスが死亡することを見出した。肺に存在する血球細胞について解析したところ、発症初期のBach2 TGマウスでは、T細胞、特に制御性T細胞の著しい増加が認められた。一方で、死亡直前のBach2 TGマウスでは、エフェクターT細胞の増大が認められた。そこで支援班に相談し、野生型、Bach2 KO、Bach2 TGマウスの肺に存在する血球系細胞のシングルセルRNAシーケンス解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究成果により、Bach2 KOマウスで自然発症するACOS様の病態形成にT細胞メバロン酸合成の活性化が関与していることが明らかになった。また、Bach2 TGマウスにおいて肺胞蛋白症が自然発症し、それには制御性T細胞の増殖亢進が関与している可能性が明らかになった。これらの結果は、T細胞におけるBach2の発現量の増減が、肺の恒常性維持の破綻を引き起こす可能性を示唆するものであり、研究の進捗状況は想定以上に順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Bach2によるGfi1、メバロン酸合成経路を中心としたT細胞代謝制御機構の解析を進める。また、支援班による、野生型、Bach2 KO、Bach2 TGマウスの肺に存在する血球系細胞のシングルセルRNAシーケンス解析の結果を分析するとともに、ChIP-シーケンスによりヒストン修飾の変化を解析することで、T細胞Bach2による肺炎症細胞社会のエピゲノム-代謝制御の分子機構について明らかにする予定である。
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