令和3年度は、再解析データを用いた南極大陸温暖化に関する研究を継続し、衛星データや再解析データを用いた南極圏で発生する雲の解析、南極の昭和基地で取得されている大気レーダーデータの同化実験に関する研究を実施した。南極温暖化に関する研究については、昨年度の研究成果をまとめた英語論文が査読付き国際誌に掲載された。この研究では、南極温暖化の長期変動とその原因を明らかにしただけでなく、使用した再解析データの再現性を調査し、長期変動を議論するのに十分な再現性であることを示した。南極圏で発生する雲に関する研究では、複数の衛星データを組み合わせ、海洋起源の生物性エアロゾルが氷雲の形成に影響していることを明らかにした。特に、夏の南大洋では、生物プランクトンが多い領域で氷雲の発生頻度が多い傾向が見られており、研究成果は査読付き国際誌に掲載された。南大洋では、将来予測モデルで使用される数値モデル内で太陽放射の誤差が大きいことが報告されていることから、太陽放射収支に影響する氷雲の新たな形成過程を考慮することで数値モデルの改善が期待できる。また、しらせ船上で約10年間取得されて雲底高度の観測データと再解析データを比較し、雲の再現性の良い再解析データを明らかにした。今後は、雲の長期変動とその影響に関する解析を実施することで、南極圏の気候変動にどのように影響しているか解明することが期待できる。観測データ同化実験に関する研究については、海洋研究開発機構で独自に開発されたデータ同化システムや大気大循環予報モデルを使用し、日本の南極昭和基地で取得されている大気レーダー観測データが天気予報精度に与える影響について調査した。大気レーダーの風速データを天気予報に組み込むことで、オーストラリアに接近する低気圧の予報精度の向上に貢献している可能性があることがわかった。
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