研究領域 | 熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床 |
研究課題/領域番号 |
20H04966
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新谷 昌人 東京大学, 地震研究所, 教授 (30272503)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重力計 / 南極 / 氷床 / レーザー |
研究実績の概要 |
本研究は、南極氷床上など極限的な野外環境における多点重力観測を実現するための小型絶対重力計の開発を目的とする。南極域における氷床の質量収支や氷河期からの変動を理解するためには質量分布や地盤の上下変動に感度を持つ重力観測が有効である。これまで困難であった南極域の氷床上や露岩上での複数の絶対重力計による同時連続観測を実現するため、研究代表者が開発した計測技術をベースに小型絶対重力計の開発研究を行い、従来の重力観測で不十分であった観測領域を補完し、時間・空間分解能の向上を目指す。 これまで開発した絶対重力計TAG-1の計測技術をベースに、南極氷床上で多点連続観測するため、本体の3つの主要な構成要素、すなわち落下装置、組み込み加速度計、光学ユニットのうち、R2年度は組み込み加速度計および光学ユニットをそれまでの1/2程度のサイズに小型化した装置を製作した。設計には3次元CADおよび3次元プリンターを活用し試作を通じて構造を検討した上で、低温においても熱膨張係数の極めて小さいスーパーインバー合金を主要部分に用いて製作を行なった。さらに光軸調整を遠隔で行えるようにモーター機構を光学ユニットの傾斜調整部分に導入し、野外の露岩上の観測における調整を円滑に行なえるようにした。 これらを組み合わせた改良版TAG-1を用いて、R3年度に南極昭和基地重力計室および周辺露岩において実証試験観測を行う予定であり、そのための準備をR2年度は計画に沿って実施した。並行して南極の観測に必要な運搬装置、露岩上での設置機構、野外測定中の簡易ブースなどの検討を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、本体の3つの主要な構成要素、すなわち落下装置、組み込み加速度計、光学ユニットのうち、小型化が容易な組み込み加速度計および光学ユニットを現状の1/2程度のサイズにした装置を製作し、さらに光軸調整を遠隔で行えるようなモーター機構を光学ユニットに導入することになっていた。R2年度にそれらの課題を概ね計画に沿って実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度は計画に沿って、改良版TAG-1を用いて南極昭和基地重力計室および周辺露岩において実証試験観測を行う。また、南極野外での温度、気圧、傾斜等の環境計測を行うための環境計測ユニットを製作し、露岩および氷床上で計測を行う。観測結果を既存観測データと統合しGIA解析に利用するとともに、南極露岩・氷床上で連続観測できる小型絶対重力計の構成と運用方法を検討し、南極地上重力観測の新たな手法の提案として本研究の結論をまとめる。
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