公募研究
本研究では、南極アイスコア中の硫酸及び硝酸の同位体組成に注目し、過去の地球における環境変動の復元を目的としている。当該年度は、南極アイスコアの前段階である大気エアロゾル中の硫酸エアロゾルに注目し、内陸・沿岸における硫酸の三酸素同位体組成(Δ17O値)を比較した。その結果、夏季に南極内陸部においてΔ17O値が特異的に高くなる傾向を発見した。この結果と本領域の前回の研究課題で開発した大気化学輸送モデルを組み合わせた解析から、この特異的な高いΔ17O値は、メタンスルホン酸(MSA)が硫酸に酸化されることで、非常に高いΔ17O値(約12‰)が硫酸に乗り移っていたことが示唆された。このような反応は雪中でも生じている可能性が高く、以上から、Δ17O値は大気から沈着しアイスコアとして長期間保存される間に変質していることが考えられた。以上の結果を学会で報告した他、国際誌に発表した。上記と並行し、当該年度には南極内陸のアイスコアの分析を対象としており、その前処理を進めた。これらの分析は次年度中に完了できる見込みが立ったため、着実に研究を遂行できた。
2: おおむね順調に進展している
南極アイスコア中に保存される硫酸の三酸素同位体組成が沈着後に変化しうる可能性を発見したことは重要な発見であり、着実な成果を発表するに至った。一方で、アイスコア試料の処理は、新型コロナウィルス感染対策による出勤制限などにより当初の計画よりやや遅れて進行している。
本研究は2年計画であるため、次年度は前半に集中してアイスコア試料の分析を行い、後半に学会発表及び論文投稿を予定する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
Journal of Geophysical Research: Atmospheres
巻: 126 ページ: e2020JD033583
10.1029/2020JD033583