研究実績の概要 |
令和3年度は、前年度に引き続き、衛星搭載型レーダー高度計群(CryoSat-2/SIRAL,Sentinel-3A/SARAL,Sentinel -3B/SARAL, Jason-2/Poseidon-3, Jason-3/Poseidon-3B, Saral/AltiKa)を統合し,海盆域から沿岸域まで海氷による欠損のない海面力学高度データセットの構築を行った。構築した海面力学高度データから見出した4つの巨大定在海洋渦のうち、トッテン棚氷への海洋熱輸送に寄与するポインセット渦・西サブリナ渦に着目し解析を行った。砕氷艦しらせによる現場観測データを併用することから得た絶対流速場から、両渦ともに順圧流速構造を呈することが明らかになった。さらにポインセット渦は11.7TW、西サブリナ渦は2.6TWの極向き海洋熱輸送に寄与することも明らかになった。また新たに構築した沿岸域までを網羅する海面力学高度分布・流速分布から、海盆域に存在する巨大定在海洋渦群とトッテン棚氷沖の時計回り循環のカップリングにより、暖かい周極深層水がトッテン棚氷まで輸送されることが示唆された。また、本研究の衛星データセットを応用し、暖かい周極深層水の輸送経路について調べるため行った粒子追跡実験でも、主要経路として南極周極流ー東南極陸棚斜面に点在する巨大定在海洋渦ー棚氷・氷河(しらせ氷河沖、アメリー棚氷沖、トッテン棚氷沖)となることが示され、現観測結果と整合的であった。これらに加えて、本研究データの応用することで、ライギョダマシの卵・仔稚魚の生育場や輸送に関する新たな知見を得る事ができた。
|