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2020 年度 実績報告書

鉄・硫黄・リンの化学種別の存在量と同位体組成から探る南大洋の酸化還元状態の変動史

公募研究

研究領域熱ー水ー物質の巨大リザーバ:全球環境変動を駆動する南大洋・南極氷床
研究課題/領域番号 20H04975
研究機関東邦大学

研究代表者

山口 耕生  東邦大学, 理学部, 准教授 (00359209)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード南大洋 / 堆積物 / リン / 微量元素
研究実績の概要

2020年度は、南大洋の堆積物に記録される過去の海洋の栄養塩状態や酸化還元状態を解明するために、2019年に南大洋インド洋区のDel Cano Riseで掘削された堆積物柱状試料(DCR-2PC)を用いて、リンの存在形態別分析と微量元素分析を行った。過去数万年間の環境変動を記録する明暗互層からなるDCR-2PCコアから計61試料を採取し、20試料を選び、凍結乾燥後にメノウ乳鉢で粉末化したものを本研究の分析対象の試料とした。

リンの分析では、Ruttenberg (1992)のSEDEX法を改良した連続抽出法によって、リンを吸着性リン(Pabs)、鉄結合態リン(PFe)、砕屑性リン(Pdet)、自生アパタイト態リン(Pauth)、有機態リン(Porg)、の5形態に分画した。各化学形態のリンは、それぞれ、間隙水中のリン濃度、酸化環境での堆積、大陸風化(ダストを含む)による流入、鉄水酸化物や有機物からの再沈殿、還元環境での堆積を反映する。微量元素分析では、粉末試料を混酸による加熱加圧で全岩分解して希硝酸溶液とし、誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-MS)で測定した。

以上の分析の結果、試料の明暗の色の違いによってリンの化学形態別存在量が変化し、暗色試料にはredox-sensitive elementsと呼ばれる微量元素がより多く含まれることがわかった。暗色試料が堆積した氷期の堆積環境では、海洋表層への鉄の供給量が増大したことで初期生物生産が増大し、大量の有機物が生成され、深海へ沈降していく鉄酸化物に表面吸着したリンや有機物粒子としてリンが輸送され、堆積物への供給量が増大し、海水中または堆積物中での分解の際に溶存酸素を消費し、環境が嫌気的となったことが考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍のため、特に2020年度前半は分析担当の学生の登校がままならず、研究は先行研究を理解してまとめることしか出来なかったが、秋以降、限られた登校時間の中で奮闘した結果、予定していた試料数の分析項目をこなすことが出来た。

今後の研究の推進方策

上記の研究で用いた同コアの未分析部分の試料の分析を行い、かつ、南大洋の他地域での白鳳丸での研究航海によって採取された堆積物柱状試料を新たに入手し、リンの存在形態別分析や微量元素分析に加えて、鉄や硫黄の存在形態別分析を行う。

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公開日: 2021-12-27  

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