公募研究
本研究の目的は、新学術領域研究「共創的コミュニケーションの言語進化学」で取り組む意図共有と階層性の関係性の解明の中で、特に意図共有に関連した共同注意行動と言語発達の関連及び意図共有にかかわる音声を聞いた際に引き起こされる大脳皮質の反応を、定型発達児と自閉スペクトラム症児を対象に調べることである。2020年度は、自閉スペクトラム症の成人を対象に、意図共有の音声を聞いた際の脳活動と言語能力の関連を調査した結果について報告した。また、共同注意の発達が自閉スペクトラム症の子どもの言語機能に与える影響について検証した。3-7歳の自閉スペクトラム症のある子ども116名(男児87名、女児29名)を対象に、共同注意行動と言語機能の関係を調べた。共同注意行動の尺度として、自閉症評価尺度(ADOS)に含まれる共同注意の項目の得点を用い、言語機能の評価として、認知機能検査K-ABCの言語機能に関する下位検査「数唱」(聴覚的短期記憶)「表出語彙」(言語表出)「なぞなぞ」(言語的概念推論)と、PVT-R(言語理解)を用いた。共同注意行動とそれぞれの言語機能との関連を調べた結果、共同注意行動と「なぞなぞ」(言語的概念推論)に有意な相関あることがわかった。つまり、3-7歳の自閉スペクトラム症児において、共同注意の障害の程度が、言語の概念的推論能力に関連することが示された。本結果は、これまで比較的低年齢の子どもを対象に調査されてきた共同注意と言語獲得の関連について、3歳以上という1,2語文を獲得した以降の年齢では、共同注意行動がなぞなぞ課題に反映されるような言語の意味のネットワークの構築にも寄与することを示唆する結果である。本結果について国際学術誌へ投稿の準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、研究を遂行するために必要なデータを収集することができている。現段階で、必要な機材などを整えており、次年度も本研究課題の目標を達成するための研究に取り組むための準備を整えつつある。
2020年度の結果をもとに、引き続き共同注意行動と意図共有の音声「ね」を聞いた時に引き起こされる脳活動との関連を調査する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
International journal of molecular sciences
巻: 22 ページ: 2611
10.3390/ijms22052611
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 14558
10.1038/s41598-020-71254-w
Brain and behavior
巻: 10 ページ: e01706
10.1002/brb3.1706