研究領域 | 共創的コミュニケーションのための言語進化学 |
研究課題/領域番号 |
20H04995
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
藤澤 隆史 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 准教授 (90434894)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | コミュニケーション / 二者 / 対人コミュニケーション / 多様性 / インタラクション / 合意形成 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、個人間で多様性を有する二者によるコミュニケーションがポジティブな効用をもたらしうるのかを明らかにするために、以下の3つの課題から検証する。課題①では、成人男女二者において、個人の多様性が合意形成に至るコミュニケーションに及ぼす影響を解明するために、脳機能計測、遺伝子・内分泌計測、心理計測を行い、それらの個人差変数と合意形成に至るコミュニケーションとの関連性について検討した。その結果、合意形成におけるパフォーマンス改善と関連する脳機能部位を同定したところ、ペア男性19名では、ポジティブに関連する部位として後部帯状回、前頭眼窩皮質、舌状回、ペア女性18名では、左後部中側頭回が同定され、いわゆる安静時脳機能における「デフォルトモード・ネットワーク」に相当する領域の関与が重要な役割を果たしていることが示唆された。課題②では、学童期児童と養育者の二者において、個人の多様性と母子間コミュニケーションの質との関連性を解明するために、課題①と同様のパラメータについて、その関連について検討した。その結果、アイコンタクトの頻度が多い子どもでは、島皮質の自発性脳活動だけが高いことが確認され、母親では、前帯状回の脳活動が高いことが確認された。また、アイコンタクトの頻度は母子間コミュニケーションの質とも正に関連していることが見いだされ、このようなスムーズな母子コミュニケーションの成立条件にはアイコンタクトが関与し、その神経基盤としては母子共通して顕著性ネットワークが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。課題③では、発達障害者と定型発達者の二者において特性の違いが合意形成と言語・非言語コミュニケーションに及ぼす影響の解明することを目的としている。実験では、上記課題パラダイムに基づき次年度に実施する計画で準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において、まず課題①では、20ペアの測定を終了し予備検討を行った。その結果、合意形成におけるパフォーマンス改善と関連する脳機能部位を同定したところ、男性では、ポジティブに関連する部位として後部帯状回、前頭眼窩皮質、舌状回、女性では、左後部中側頭回が同定され、いわゆる安静時脳機能における「デフォルトモード・ネットワーク」に相当する領域の関与が重要な役割を果たしていることが示唆された。課題②では、当該年度に取得した母子46組の安静時脳機能画像、内分泌、行動計測データを解析し、相互視線と関連する自発性脳活動として子では前部島皮質、親では前部帯状回など顕著性ネットワークに属する脳機能部位を同定した。本研究成果についてはScientific Reports 誌に論文発表を行った。課題③では、発達障害者と定型発達者の二者において特性の違いが合意形成と言語・非言語コミュニケーションに及ぼす影響を解明することを目的としており、課題①・②と同様のパラダイムに基づき次年度に実施する計画で実験準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
まず課題①では、合意形成におけるパフォーマンス改善と関連する脳機能部位としては、現在までに安静時脳機能における「デフォルトモード・ネットワーク」の関与が示唆されているが、合意形成における言語変数の定量的評価が十分に検討できていないため、残りの研究期間でこれを明らかにし、脳機能の関連性を明らかにすることを目標とする。課題②では、母子相互作用における質におけるアイコンタクトの重要性とその神経基盤について明らかにすることができ、研究成果について論文発表することができた。その一方で、脳機能画像と言語コミュニケーション変数について他の解析方法による検討の余地を残している。またそれらの変数間の関連性についても検討の余地があるため、残りの研究期間において検討を進める。課題③では、定型-非定型発達成人ペア実験を計画しているが、実験準備は終了しており、次年度上半期に実測定を進め、下半期で実験結果について成果を取りまとめる。
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