公募研究
心の理論(他者の心的状態に関する理解)に関して研究を行い、前年度までに、アイ・トラッキングを用いた予測的な注視課題において、類人猿が他者の誤信念(現在の状況とは異なる状況に対する信念)を理解する可能性を示唆する成果を上げた。今年度は、同実験がマカクザルでも追試された成果を受けて、短い総説を執筆した。また、予測的な注視課題において示唆された誤信念理解については、ヒトの子供が4歳以降に示す真の誤信念理解とは異なり、特殊な認知プロセスによる限定的な心の理論(ミニマル心の理論)だとする主張がある。この主張では、とくに、アイ・トラッキングを用いた予測的な注視課題において、ヒトの子供や大人を対象にした実験において特定の実験条件を変えたとき(他者の誤信念を導入するために、他者の興味対象物の位置を変えるのではなく、種類を変える)、誤信念理解を支持する証拠が得られなくなるという報告に基づいて限定性が定義されている。しかし、それらの先行実験は直感的に理解が難しい課題が用いられており、より簡単な課題において、同様の結果が得られるのかがまだ検討されていない。今年度は、その点を検討するため、類人猿を対象に、先行実験をさらに(簡潔に)改変したアイ・トラッキングを用いた予測的な注視課題を行った。ライプチヒ動物園(マックスプランク人類進化研究所)と、熊本サンクチュアリ(京都大学)と、霊長類研究所(京都大学)において、様々な類人猿種を対象に実験を行った。データは分析中であるが、一部の類人猿グループにおける結果では、改変された課題においても誤信念理解を示唆するデータが得られている。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍によって、ヒトを対象とした実験は遅れているが、動物を対象とした実験は順調に進んでいる。
申請者が2021年4月1日よりコンスタンツ大学に就職したために、課題を中断し、帰国後、研究を再開する予定である。ヒトの大人と子供を対象にした実験も行う予定であったが、コロナ禍の影響によって遅れている。渡航中あるいは帰国後には実験(上記の改変された予測的注視課題)を行うことができると思われる。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件)
Japanese Psychological Research
巻: - ページ: -
10.2502/janip.71.1.1
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