共感性及び感覚処理感受性がどのように他者への行動選択に影響するかを明らかにするため、「日本語版対人反応性指標」(日道ら,2017)の下位尺度である「個人的苦痛」「共感的関心」「視点取得」「想像性」と「Highly Sensitive Person Scale日本版(HSPS-J19)」(髙橋,2016)の下位尺度である「低感覚閾」「易興奮性」「美的感受性」を独立変数に設定した。物語を用いた調査の下位尺度である「善利益理解」「善利益共感」「善利益行動」「善不利益理解」「善不利益共感」「善不利益行動」「悪利益理解」「悪利益共感」「悪利益行動」「悪不利益理解」「悪不利益共感」「悪不利益行動」の計12項目を従属変数に設定した。その結果、善人が利益を得る話、善人が不利益を被る話、悪人が不利益を被る話については有意差が見られなかったが、悪人が利益を得る話に対する理解については、共感性の下位尺度である「想像性」の得点が高いほどより大きな理解を示すことが明らかになった。悪人が利益を得る話に対する共感については、共感性の下位尺度である「個人的苦痛」の得点が高いほど共感を示しにくいことが分かった。 理解・共感・行動の得点を合計して行った重回帰分析の結果、共感性の下位尺度である「個人的苦痛」の得点が高いほど、悪人が利益を得る場面での理解・共感・行動が低くなり、同じく共感性の下位尺度である「想像性」の得点が高いほど理解・共感・行動が高くなることがわかった。
|