公募研究
言語という高次な認知機能を獲得するためには,文法構造,特に階層的構造の理解と学習能力が必須となる。本研究はヒト発達初期における「階層性」についての学習能力とその脳内基盤,自発的発話における「階層性」について明らかにする。このために研究1では新生児を対象とし,階層構造を持つ人工文法刺激を用い,人工文法学習と人工文法処理における脳反応と脳機能結合そして安静状態の脳機能結合変化を明らかにすることを目的とした。特に前回行った6-7ヶ月児の結果と比較することで発達変化を明らかにする。一方で,研究2では, 3-12ヶ月乳児の発声における階層性を検討するために縦断的な発話の録音を行い,分節化する予定であった。しかし,コロナ禍の影響でフランスからの録音装置生産,配送が大幅に遅れ,2021年度に録音は開始できたが録音量が当初の目標を大きく下回ったため,今年度は解析は行わず,代替の4歳児実験(心の理論と言語発達の関係性の研究)を実施した。本報告では主に研究1の結果を報告する。新生児は6-7ヶ月児と同様に人工文法規則学習後に「規則条件」文法に対しては馴化反応である脳活動の低下が見られたのに対し,「違反条件」文法では脳活動の上昇がみられた。しかし,その脳部位は6-7ヶ月児と全く異なり,前頭極,背外側前頭前野,下前頭回を含む左前頭前野であった。新生児では学習中の脳機能結合も測定していたが,学習中には安静状態とは異なる長い結合も多くみられた。学習時の脳機能結合と学習後の「違反―規則」に対する前頭前野活動との関係を解析したところ,学習後の脳活動が強いほど,学習中の縁上回から左前頭前野の脳機能結合が弱まっていることが見いだされた。縁上回は6-7ヶ月児で人工文法学習に強く関係する部位であったため,これら新生児の学習が進むにつれ,学習の脳内基盤が後方言語野に変化する可能性が考えられた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Pediatric Research
巻: 91 ページ: -
10.1038/s41390-022-01939-7
JASA Express Letters
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慶應義塾大学大学院社会学研究科紀要
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https://web.flet.keio.ac.jp/~minagawa/project/